【屠羊之肆】そのものの意味は【羊の肉を売る店】です。
『荘子』譲王(ジョウオウ)篇では己(おのれ)を弁(わきま)えて、不相応な地位や恩賞を得ようとしないことの喩えとなっています。
【屠羊】は羊肉を売るために羊を殺すことです。
【肆】は、镸(毛の長い動物)+聿(隶がもとの字形で、手でシッポを摑むことを表わしています)から作られた
会意文字です。音は「シ」ですが、意味が沢山あります。
① 祭りの名前。② 解(と)く。骨と肉を切り離す。③ さらす。④ ころす。⑤ つらねる。
⑥ 店。 ⑦ のばす、ひろげる。⑧ ほしいまま。
【屠羊之肆】の場合は「店」の意味です。
楚の昭王は呉の軍隊に攻め込まれ、国外に亡命した(B.C.511)。
羊の屠殺(トサツ)業をしていた説(エツ)も逃げ出して、昭王のお供をした。
昭王は国に帰ってから、亡命についていった人々に恩賞を与えようとして、屠羊説(トヨウエツ)も
その仲間に入れられた。
すると屠羊説は言った
「大王様が国を失われて、私めは屠羊の家業を失いましたが、大王様がご帰国になって、
私めも屠羊の家業に戻りました。私の爵位(シャクイ)俸禄(ホウロク)はもうこれで元通りに
なったのです。さらに何の賞を頂く事がありましょうや」。
王が再三再四すすめるが、どうしても恩賞を受けようとはしなかった。
王は司馬子綦(シバシキ)に向って
「屠羊説は、地位は卑賤だが、筋道を通す事は大変立派だ。そなた、私のために
彼を三公の位まで引き上げてやってくれ」といった。
これを聞いて屠羊説は
豈(あ)に爵祿(シャクロク)を貪(むさぼ)りて吾が君をして
爵位・俸禄をむさぼって、わが君に
妄(みだ)りに施(ほどこ)すの名あらしむべけんや。
でたらめな恩賞を施したという汚名をかぶせてよいものでしょうか
説は敢て当らず。
わたくしめはとてもお受けできません
願わくは復た吾が屠羊の肆に反(かえ)らんと。遂に受けざるなり。
どうかもとどおりわたくしを屠羊の職に帰らせて下さい。こうして、受けなかった。
羊と関連のある人は謙虚なんですね。
わたし八重樫は昭和18年生まれの未です。年男です。