【櫝(トク)を買いて珠を還(かえ)す】と訓読みされまして、外見の立派さにとらわれて、ほんとうの価値を見失ってしまうことを戒めた四字熟語です。
【櫝】は、音:トク、意味:はこ、の形声文字です。音を表わす部分を共通にする漢字に「讀(読)書」の「讀」、「贖罪:ショクザイ。」の「贖」、「冒瀆:ボウトク」の「瀆」、「効果覿面:コウカテキメン」の「覿」、「継續(続)」の「續」などがあります。
音を表わす部分は、士+四+貝 です。似た形に「売」の正字体「賣」があります。こちらは
音を表わす部分は、士+罒+貝 です。四と罒の違いがあります。
『韓非子』外儲説(ガイチョセツ)左上にでているお話です。
楚の人で鄭(テイ)の国に行って真珠を売ろうとしたものがありました。立派な木蘭(モクラン)の
箱を作り、それを香木でたきしめ、珠玉をちりばめ、その中に真珠を入れました。
鄭の人はその箱だけを買って、真珠の方は返してきました。これではうまく箱を売ったとは
言えますが、うまく真珠を売ったとは言えないでしょう。
このごろの演説では、みな流暢な飾り立てた言葉を並べます。
国民はその飾り立てた言葉に耳を奪われ、ほんとうに役に立つ内容なのかを忘れてしまいます。
大昔から中身の無い美辞麗句を並べた演説は横行してたようです。