ゆったりと落ち着いていて、どんなことにも動じない、平常と変わらないさまを表わした四字熟語です。
【泰】は、大(手足を広げた人を正面から見た形)と収(左右の手を並べた形)と水を組み合わせて
作られた会意文字です。
【泰】は、水中に落ちた人を両手で助け上げる形で「やすらか」の意味になりました。
また「ゆたか、おおきい、はなはだ」の意味に用いられます。
【然】は、月(肉の省略形)と犬と灬(火)を組み合わせて作られた会意文字です。
「やく、もえる」の意味でしたが、音が同じということから「しかり、しかれども、しこうして」の
意味に用いられました。そのため「もえる」には、さらに「火」をつけて「燃える」の字を作りました。
【泰然】は、落ち着いて物事に動じないさまを表わします。悠然としていて動じないこと。
【自】は、正面から見た鼻のかたちです。象形文字です。
自分の鼻を指さして「自分」を表わす仕草は昔からあったそうです。
【自】は、「おのれ、みずから」の意味で用いられ、「はな」には音符号の「畀:ビ・ヒ」をつけて
「鼻」の字を作りました。
【若】は、巫女が長髪をなびかせ、祝詞を入れた器「口」を前に置き、両手をあげて舞いながら神に祈り、
神のお告げを求めている形を文字化した、象形文字です。
神意に従うことから「したがう、かくのごとし」の意味になり、若い巫女さんであったので「わかい」の
意味にも用いられるようになりました。
【自若】は、何に対してもあわてず、驚かず、落ち着いているさまを表わします。
平常と少しも変わらない様子をいいます。
【泰然自若】は、落ち着いている様を表わす【泰然】、【自若】の二語を重ね、どのような事態に出あおうとも、落ち着きを失わないということを強調した四字熟語です。
出典といいますか使用例を見つけました。
矢石(シセキ)の前に至ると雖(いえど)も、泰然自若たり。 『金史』顔盞門都(ガンサンモント)傳
あなたったら、あんまり愕(おどろ)かない性質(たち)ね。泰然自若たるものね。
『愛の渇き』三島由紀夫
この分でいると、教場内へ乱入し兼ねまじき勢いに見えましたけれど、
与八は泰然自若として驚きませんでした。 『大菩薩峠』中里介山
類義語
神色自若:シンショクジジャク。 鷹揚自若:オウヨウジジャク。 従容自若:ショウヨウジジャク
類義語
小心翼翼:ショウシンヨクヨク。 戦々恐々:センセンキョウキョウ。 右往左往:ウオウサオウ。