この世に生まれ出る前からの深い因縁によって今のつながりがあるという意味です。
道で見知らぬ人と袖が触れ合うのも、前世からの因縁によるものだということで、言われているのが
「袖振り合うも多生の縁」
です。
「多生」は、何回も生まれかわることで「輪廻転生」のことを言います。
人と人との関係はこの世に生まれ出る前からの深い因縁によるもので、どんな出会いも大切にしなくてはならないという考え方です。
「多生」は「他生」とも書きますが、本来は誤りです。
謡曲の『山姥』には【他生の縁】で出ています。
よしや世の中 悪戯に
山巡り一樹の陰や一河の流れ
これみな【他生の縁】ぞかし
まして我が名を夕月の
浮世を渡るひとふしも
狂言綺語の道すぐに
讃仏乗(サンブツジョウ)の因ぞかし
謡曲の『田村』にも【他生の縁】で出ています。
あら有難の御経やな。
清水寺の瀧つ波。
一河の流を汲んで。
【他生の縁】ある旅人に。
言葉を交す夜声の読誦。
是ぞ則ち大慈大悲の、
観音擁護の結縁たり。
平家物語では【多生の縁】です。
一樹の陰にやどるも先世の契りあさからず
同じ流れをむすぶも【多生の縁】なほふかし。
【多生の縁】のあらばこそ、一読二読 有り難く、
末の世までの、御愛読、伏して願いて、『今日の四字熟語』。