【跖(セキ)の狗(いぬ)堯(ギョウ)に吠(ほ)ゆ】と訓読みされまして、跖の飼っている狗が堯に吠えつくという意味です。
人はそれぞれ、その主人が善人であるか悪人であるかを問わずに、主人に忠義を尽くそうとする。
【跖】は、盗跖(トウセキ)と言いまして春秋時代・魯の盗賊団の親分です。
強盗略奪をほしいままにし、盗賊の代名詞のように語られている人物です。
【堯】は、伝説の帝王で五帝の四番目にあたります。仁徳すぐれ、位を譲った帝舜とともに、
理想的な聖天子と仰がれています。
【跖狗吠堯】は、戦国策 巻十三 斉六のところにでています。
跖之狗吠堯、
跖の狗堯に吠ゆるは、
盗跖の犬は堯に吠えましたが、
非貴跖而賤堯也。
跖を貴(たっと)んで堯を賤(いや)しむに非(あら)ず。
盗跖を尊び堯を賤しんでのことではありません。
狗固吠非其主也。
狗は固(もと)より其の主に非ざるに吠ゆるなり。
犬は必ず、その主人でない者には吠えるからなのです。
善悪を問わず主人に尽すことの喩えです。
そのことの善し悪しは問題にしてません。