台風が過ぎ去った後、空が晴れ渡りよい天気になることを表わした四字熟語です。
また、大きな騒動が収まり、静けさを取り戻すことにも使われます。
【台風】と言う言葉は、明治になってから使われました。最初は「タイフーン」とカナ書きでした。
英語の「typhoon」のことです。
明治の末に、気象用語として、この「typhoon」のことを漢字で「颱風」と書くようになりました。
戦後になると、当用漢字にこの「颱」の字が入らなかったので、書き換えで【台風】となりました。
日本では、野の草を吹いて分けるところから、野分(のわき、のわけ)といいました。
『枕草子』『源氏物語』などに【野分】がみえます。
『枕草子』 二百段には、まさしく【台風一過】の様子が語られています。
野分(のわき)のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ。
立蔀(たてじとみ)・透垣(すいがい)などのみだれたるに、前栽(せんざい)どもいと心くるしげなり。
おほきなる木どもも倒(たふ)れ、枝など吹き折られたるが、萩・女郎花(をみなへし)などの
うへによころばひふせる、いと思はずなり。
格子(かうし)の壺などに、木の葉をことさらにしたらんやうに、こまごまと吹き入れたるこそ、
荒かりつる風のしわざとはおぼえね。
『源氏物語』では、五十四帖の巻名のひとつとして、第28帖【野分】があります。
原文:これを御覧じつきて、 里居したまふほど、御遊びなどもあらまほしけれど、八月は 故前坊の
御忌月なれば、心もとなく思しつつ明け暮るるに、この花の色まさるけしきどもを御覧ずるに、
野分、例の年よりもおどろおどろしく、空の色変りて吹き出づ。
現代語訳:この庭をお気に召して、里住みなさっていらっしゃる間に、管弦のお遊びなども
なさりたいところであるが、八月は故前坊の御忌月にあたるので、気になさりながら
毎日過ごしていらっしゃった。この花の色がいよいよ美しくなっていく様子を御覧になっていると、
野分が、いつもの年よりも激しく、空も変わって風が吹き出す。
【野分】は読んでも聞いても、響きのいい和語に感じてましたが、実は台風だったんですね。