暗(くら)やみの中で、手探りをしてあれこれ探し求めることを表わします。また、手掛かりのないまま探し求めることも表わします
『隋唐嘉話:ズイトウカワ』中に【暗中摸索】がでています。
唐の政治家、狡猾で冷酷無情な性格の許敬宗(キョケイソウ)についての一文として記載されています。、武則天(則天武后)を擁立し権勢を振るった人物ですが、文才に優れ、著作郎になり国史の編纂などを行うといった一面もあったそうです。
許敬宗性軽傲、見人多忘之。
許敬宗(キョケイソウ)、性 軽傲(ケイゴウ)にして、人を見て多く之れを忘る。
許敬宗は性質が多少傲慢で、そのうえ物忘れがひどく会った人の名前も覚えていない。
或謂其不聡。
或る人其の聡ならざるを謂ふ。
或る人が、(会った人の名前も覚えていないとの)放漫な態度を指摘して
曰卿自難記
曰く、卿 自(おのづか)ら記し難きのみ
お会いした人の名前位は覚えておかれたら宜しいでしょう。
若遇何・劉・沈・謝、
若(も)し何晏(カアン)、劉楨(リュウテイ)、沈約(シンヤク)、謝霊運(シャレイウン)、
遇(あ)はば
もし、何晏、劉楨、沈約、謝霊運といった有名人に会ったら、
暗中摸索著亦可識之。
暗中に摸索し著するも亦(ま)た之れを識(し)るべし。
暗い中を探ってでも覚えておこうとするでしょう。
【摸】は、「扌」+「莫:モ」から作られた形声文字です。意味は、さぐる、とる、うつす、です。
【索】は、繩を綯(な)う様子を文字化した象形文字です。上部を木を通して結び、そこから綯(よ)り始めて
索状(ひもジョウ)に編み続けてゆきます。
縄を綯うように、しだいにたどってものを探し尋ねる、ということから「さがす、もとめる」という
意味になりました
【摸索】は、さぐり求める、と言う意味になります。
【摸】の字が常用漢字でないため、同じ音をもつ「模」を【摸】の書き換えとして使ってます。