【哀(アイ)を銜(ふく)み誠(まこと)を致(いた)す】と訓読みされまして、
哀しみの気持ちを心に抱き、真心を捧げるという意味で、人の死を悼む言葉です。
【銜】は、行+金から作られた会意文字です。馬を行かせるために馬の口にはさむ、「くつわ」の意味を
表わす字として作られました。
意味は ① くつわ(轡)。② ふく‐む、くわ‐える です。
【銜哀致誠】の四字熟語は、韓愈の『十二郎(ジュウニロウ)を祭(まつ)るの文(ブン)』の最初のところに
でてきます。
年月日。季父愈、聞汝喪之七日、
年月日。季父愈、汝の喪を聞くの七日、
年月日。叔父の私がそなたの死を聞いたのは七日目
乃能銜哀致誠、
乃ち能く哀(アイ)を銜(ふく)み誠を致し、
ようやく哀しみが募り真心をもって
使建中遠具時羞之奠、
建中をして遠く時羞(ジシュウ)の奠(テン)を具え、
建中を遣わして、遠くから季節の供物をそなえ
告汝十二郎之靈。
汝十二郎の霊に告げしむ。
そなた十二郎の霊に私の言葉を捧げる。
「十二郎」は、一族中の十二番目の男子をいいます、
【銜】を含む四字熟語です
銜尾相随 (カンビソウズイ) 車や動物が切れ目なく連なって進むこと。
枯魚銜索 (コギョカンサク) 親には孝養を尽すべきであるという教え。
泥首銜玉 (デイシュウカンギョク) 頭を土につけ、口に玉をふくむことで、謝罪降伏の儀礼。
鳳凰銜書 (ホウオウカンショ) 天子の使わした使者が勅書をたずさえていること。
803年 韓愈36歳の夏、甥の韓老成が急逝した驚き、痛恨の思いに満ちた文章です。