【円転】は、まるく転がることから、なめらかな動きの意味です。
【エンテン】は「ン」で終わる畳韻の擬態語です。【転】の正字体は【轉】です。
【滑脱】は、すべりぬけることです。
【カツダツ】も「ツ」で終わる畳韻の擬態語です。
【円転】、【滑脱】の二語を重ねて滑らかさを強調した四字熟語です。
【円転滑脱】は、言葉や行動がなめらかで角立たなく、物事をすらすら処理していく様子を表わした四字熟語です。物事をそつなくこなすことを言います。
中国古典には見当たりませんが。夏目漱石『吾輩は猫である』第七章に【円転滑脱】が使われています。
しかし一たび流しを出て板の間に上がれば、もう化物ではない。普通の人類の
生息(セイソク)する娑婆(シャバ)へ出たのだ、文明に必要なる着物をきるのだ。
従って人間らしい行動をとらなければならんはずである。今主人が踏んでいるところ
は敷居である。流しと板の間の境にある敷居の上であって、当人はこれから歓言愉色
(カンゲンユショク)、【円転滑脱】の世界に逆戻りをしようと云う間際である。
その間際ですらかくのごとく頑固(ガンコ)であるなら、この頑固は本人にとって
牢として抜くべからざる病気に相違ない。
病気なら容易に矯正する事は出来まい。
この病気を癒す方法は愚考によるとただ一つある。
校長に依頼して免職して貰う事、即ちこれなり。
免職になれば融通の利かぬ主人の事だからきっと路頭に迷うに極(きま)ってる。
路頭に迷う結果はのたれ死にをしなければならない。
換言すると免職は主人にとって死の遠因になるのである。
【円転滑脱】を縮めて、まるく滑らかの意味で【円滑】です。