困難やつらいこと、苦しいことに出会って、大変な思いをすることを表わした四字熟語です。
【艱】、【難】 ともに振りかかった困難を表わします。
【辛苦】は、つらく苦しい と言う意味です。
【艱難】、【辛苦】という類義の熟語を重ねて、ただ苦しさを強調して表現したというよりは。そういう体験が繰り返されていることも表わしています。
【艱】は、艮を部首とした形声文字で、音は「カン」、意味は「苦しむ」です。
【難】は、隹(とり)を火矢で射る形から作られた会意文字です。鳥を驚かし悩ますの意味となりました。
そこから「むずかしい、かたい」の意味に変化しました。
【艱難】は、熟語の終わり方が「ン」です。これを『畳韻:ジョウイン』の擬態語といいます。
意味は、くるしみ、なやみ です。
困難や苦労を乗り越えて、立派な人間になるということで
『艱難汝(なんじ)を玉にす』と言う諺が有りますが、これは
『Adversity(不運・逆境) makes a man wise.』の意訳です。
『書経』無逸篇に【艱難】が使われています、
その父母は稼穡(カショク:農業)に勤労せるに、
その子は乃(すなは)ち稼穡の【艱難】を知らず。
また杜甫の『登高』という七言律詩に【艱難】がでています。6句、7句、8句を記載します。
6 百年多病 独り台に登る
長い闘病の身、独り高台に登る。
7 艱難 苦(はなは)だ恨む 繁霜の鬢(ビン)
苦しみの甚だしき、恨むはただ髪の白くなりしを
8 潦倒(ロウトウ:老衰)新たに停(や)む濁酒の杯
老いたわが身に、酒、止めろとは。
【辛】は、取っ手の付いた大きな針の形から作られた象形文字です。入れ墨の刑罰を象徴します。
入れ墨をされるときの痛みを【辛】といい、「つらい、きびしい」の意味となりました。
【苦】は、艹+古 から作られた形声文字で、「にがな」という草を表わす字でした。
にがい草でしたので、【苦】に「にがい、はなはだ」の意味となりました。「くるしい」の意味は、
「劬:ク」で表わしていましたが、音が同じなので「苦」に「くるしい」の意味が加わりました。
【辛苦】は、つらく苦しい と言う意味になります。
【艱難辛苦】の四字の熟語としては、中国古典に見つかりませんでした。
その代わりというのも変ですが
【粒粒辛苦】が『今日四字 No.370 http://www.fukushima-net.com/sites/meigen/441』
にあります。一読してみて下さい。