人の意見を聞き入れないで、自分の考えに留まり、あくことを知らずに欲張ることを表わす四字熟語です。
【羊很】命令に従わずに道理に背くこと。
【很】は、もとる、従わないの意味です。
【羊】は、従順なようで、牧者の指図に従わないことがあるようです。
【狼貪】狼のように欲深くむさぼること。
『史記』 項羽本紀第七 に【羊很狼貪】が出てきます。
B.C.207年、楚軍が宋義(ソウギ)を大将とし、項羽を副将として秦と戦う趙を応援に行くとき、なかなか
腰を上げない宋義に対して、項羽がいいました
わしは秦軍が趙王を鉅鹿(キョロク)に包囲していると聞いているが、すみやかに兵を率いて黄河を渡り、
わが楚軍が秦軍の外を撃ち、趙軍が内に応じると、きっと秦軍は敗れるだろう、と言うと、
宋義は
そうではない。いま秦は趙を攻め、もし戦いに勝っても兵は疲れるだろうから、わが方はその疲れに
乗ずるのが良く、かたなければ兵を率い、鼓を打って堂々と西向すればよい。きっと秦を破る事が
できよう。まず秦と趙を闘わすにこしたことはない。
堅(ヨロイ)をつけ鋭(ブキ)をとって戦うことは、わしは公に及ばぬが、
坐って策略をめぐらす事では、公はわしに及ばぬと言い、
因下令軍中曰
因って令を軍中に下して曰く
命令を軍中に下した。
猛如虎、很如羊、貪如狼、
猛(モウ)なること虎の如く、很(コン)なること羊の如く、貪(タン)なること狼の如く、
猛(たけ)きこと虎のごとく、不従順なこと羊のごとく、貪欲なこと狼のごとく
彊不可使者、皆斬之。
彊にして使う可(べ)からざる者は、皆之を斬(き)らん、と。
強暴で使いにくい者は、すべて斬罪に処せよ、と。
その後、項羽は宋義を殺害し、楚軍を掌握して、劉邦との対決に向かいます。