実際にはありえないことでも、多くの人が言うと、それを聞いた人は事実として信じてしまう、と言うことを表す四字熟語です。
『韓非子・内儲(ナイチョ)説上』にこんな話が載っています。
B.C.4世紀、魏の国。
魏の太子が趙の国に人質に行くことになり、大臣の龐恭(ホウキョウ)がお供で行く事になりました。
国を出発する前に龐恭は王様に言いました
「今、誰かが市場に虎が出た!と申しましたら、王様はお信じになりましょうか」
『いいや』
「では2人目のものが市場に虎が出た!と申しましたら、王様はお信じになりましょうか」
王は言った。
『半信半疑になろう』
「では3人目のものが市場に虎が出た!と申しましたら王様はお信じになりましょうか」
王は言った
『うむ。私は信じるだろう』
そこで龐恭は言いました
「そもそも市場に虎なんか出てきません。ところが3人もの人が言いだしますと、虎が現れたことになります。今私は魏を離れ趙へ参ります。そうなりますと私を論(あげつら)い悪口を言うものは3人どころではないでしょう。なにとぞ王様は、その讒言(ザンゲン)をお信じになりませんように」
王様はもちろん快く承諾します。
龐恭が国を離れると、とたんに中傷する物が次々と現れました。
何年か経ち、太子の人質の期限が切れたので龐恭は一緒に国に戻ってきました。
しかし王様はみんなの言うことをすっかり信用してしまっていたので、彼をもう一度大臣にすることはなかったということです。
これと同じ話が『戦国策』にも出ています。
また、『淮南子(エナンジ)』にも表現は少し違いますが似たような話が出ています。
「衆人がそうだと言えば、平地に林が生じたり、翼の無い鳥が空を飛ぶ。三人が言えば、市場に虎が現れる」
まったく根拠のない話も、多くの人が言えば聞き手は信用してしまう。だから皆が言ってるからと言って、そのまま信用してはならない。
明治5年2月21日は日本初の日刊新聞「東京日日新聞」が創刊された日だそうです。
新聞は「社会の木鐸(ボクタク)」として、三人成虎の四人目にならぬよう、事実を伝えます。