【章を断ちて義を取る】と訓読みされまして、他人の詩文の一部を取りだして、原文の意味とは無関係に、自分の都合のよいように解釈して利用することです。
『春秋左氏伝』襄公二十八年の条に、夫婦は姓を別にするという慣習を破って、同姓で結婚した者に咎め立てをした時の答の中に【断章取義】を持ち出して正当化したところがあります。
男女は姓を辨まえ同姓の結婚は避けるのにどうしてそうしなかったのか。
同族の先方が構わないといっているのに自分には致し方がなかった。
【賦詩斷章:詩を賦すに断章す】、と同じで余は求める所のみ得た。同族だから悪いなどと思わない。
詩を賦すに断章、といって引き合いに出された詩は『詩経』のことです。
春秋期には宴会や社交の場で『詩経』の詩を数句引用するのが教養の表れとされていましたが、その時に、自分の都合のよいように【断章取義】が行なわれていたようです。
これを憂えて、孔子が『詩経』を本来の意味での教養の書として普及させたことは、後世高く評価されています。