孤立して援軍のない城と夕日の光景から、勢いが衰えて心細く頼りない様子を詠った、漢詩の一節です。
【孤】は、子+瓜 から作られた形声文字です。幼くして父のない「みなしご」を【孤】といいます。
因みに、老いて夫無きを「寡:カ」
老いて妻なきを「鰥:カン」
老いて子なきを「独:ドク」
といいます。
【城】は、土+成 から作られた形声文字です。成は戈(ほこ)に飾りをつけてお祓いをする意味で、
城は祓い清められた城壁、城壁の内の「しろ」を言うようになりました。
【落】は、艹+洛(音符号) から作られた形声文字です。【落】は木の葉が落ちることをいいます。
各には上から降(くだ)るの意味があることから、木の葉に限らず、全て「おちる、くだる、やむ」の
意味に用いられます。
【日】は、象形文字で太陽の形です。太陽は丸い形で表わしますが、中が空っぽの丸い輪ではなく、
中身があることを示すために、中に小さな点を加えました。
王維の「韋評事(イヒョウジ)を送る」と題する七言絶句の詩の結句に【孤城落日】がみえます。
欲逐將軍取右賢
将軍を逐(お)うて右賢(ユウケン:匈奴の貴族の称号)を取らんと欲し
将軍に従って右賢王を捕えんとす
沙場走馬向居延
沙場(サジョウ) 馬を走らせて居延(キョエン)に向う
砂漠に 馬を走らせ 居延に向う
遙知漢使蕭關外
遥(はる)かに知る 漢使(カンシ) 蕭関(ショウカン)の外
遠く離れていても私にはよくわかる、漢の使いである君は、蕭関(ショウカン)を越え
愁見孤城落日邊
愁(うれ)えて見ん 孤城 落日の辺(ヘン)
憂愁のまなざしをもって見るのは、沈む夕日に、うかぶ町。