古いしきたりに拘って、その場しのぎに終始することを表わした四字熟語です。
【因循姑息】な手段、などと用いられます。
【因】は、口+大から作られた会意文字です。大は人の正面形、口はむしろの形です。
【因】は人がむしろの上に大の字になって寝ている形です。【因】は常に寝茣蓙として
使い続けることから、「よる、たよる」の意味となりました。
【循】は、彳+盾 から作られた形声文字です。盾を掲げて巡行することを表わします。
意味は「したがう、めぐる」です。
【因循】は、① 古い習慣に因(よ)り循(したが)っていて改めようとしないこと。
② 決断力に欠け、ぐずぐずする様子を表わします。
【姑】は、女+古 から作られた形声文字です。「しゅうとめ」の意味です。
「しばらく」の意味を表わす音(コ)が姑(コ)と同じなので、姑が「しばらく」の意味で
用いられます。
【息】は、自+心 から作られた会意文字です。「自」は正面から見た鼻の形です。これに心を加えて、
心の状態が、呼吸に現れることを言います。「いき、いきする」の意味です。
また、休息、終息のように「やすむ、いこう、やむ」の意味にも用いられます。
【姑息】は、しばらくの間、息をついて休む、ということから「その場しのぎ」の意味になりました。
「姑息な手段(その場しのぎの手段)でごまかそう」という、あまりよくない場面で使われることが
多いため、卑怯、とかケチの意味に用いられますが、本来は誤用です。
仮名垣魯文(かながきろぶん)の「安愚楽鍋(あぐらなべ)」にある一節です。
半髪(ハンパツ)頭をたたいて見れば【因循姑息】の音がする。
総髪(ソウハツ)頭をたたいて見れば 王政復古の音がする。
散切(ザンギリ)頭をたたいて見れば 文明開化の音がする。