人知の及ばない、訳の分からないことを表わした四字熟語です。
【怪】は、忄+圣(カイ) から作られた形声文字です。圣は土(土地の神様)の上に又(手の形)を
加えている形で、本来触れてはいけない土地の神の上に右手を置き、異常な心理状態となる
ことから、怪しむの意味が生まれました。
【力】は、農具の「すき」の形からできた象形文字です。「すき」を使って田畑を耕すことは多くの労力を
要することであったため、「ちから、はたらき、つとめる、はげむ」の意味に用いられるように
なりました。
【乱(亂)】は、会意文字です。
【亂】の字の左側の部分は、冂(糸を巻き取る道具)に糸(マとムの形)をかけ、その糸が乱れて
いるので、上下に手(上は爫、下は又)を加え、ほぐそうとしている形で、「みだれる」の意味です。
一方、その糸の乱れを骨べら(乚)で解いて直すことを【亂】といい、「おさめる」の意味と
なりました。
以上のことから、【亂】は「おさめる」と「乱れる」の両方の意味で使われるようになりました。
【乱】は【亂】の俗字ですが、常用漢字体となりました。
【神】は、示+申 から作られた形声文字です。音符号の申は、いなびかりの象形で天の神の意味です。
申が神のもとの字でしたが、もっぱら「もうす」に使われるようになったので、祭卓を示す「示」を
「申」につけて「神」の字を作りました。
【怪力乱神】は論語・述而篇にでています。
子不語怪力亂神。
子、怪・力・乱・神を語らず。
孔子は、怪談や、武勇伝や、猥談や、霊魂などについては、あまり語ることはなかった。
【怪力乱神】の話は、面白いのでついつい深入りしてしまいます。
人によっては、すっかり信じ切ってしまい、そちらの方に走ってしまうことにもなりかねないので、
【怪力乱神】については、あまり語ることがなかったということのようです。