厳しい父と慈しみ深い母を言います。
【厳】は、口(祝詞を入れる器)を部首とする形声文字です。
厂は崖の形です。「敢」は、杓(ひしゃく)で果実酒を汲み取り祭りの場所を清める儀式を
表します。
口を二つ並べて神を招く儀式を、慎んで厳かに行うことを【厳】といいます。そこから「つつしむ、
おごそか、いかめしい、きびしい」の意味となりました。
【父】は、丨(斧の頭部の形)+又(手の形) から作られた会意文字です。
斧の頭部を手に持つ形が【父】で、指揮権を持つ人、指揮する人をいいます。
【慈】は、心+茲 から作られた形声文字です。茲にふえる、やしなうの意味があり、
【慈】は、養う心情の意味で「いつくしむ」の訓読みとなりました。
【母】は、胸に乳房のある女の形。象形文字です。
徳富蘆花の『不如帰』に【厳父慈母】の四字熟語がみえます。
両児(ふたり)は嬉々(キキ)として、互いにもつれつ、からみつ、前になりあとになりて、
室を出で去りしが、やがて「万歳!」「兄さまあたしもよ」と叫ぶ声はるかに聞こえたり。
「どんなに申しても、良人(あなた)はやっぱり甘くなさいますよ」
中将はほほえみつ。「何、そうでもないが、子供はかあいがッた方がいいさ」
「でもあなた、【厳父慈母】と俗にも申しますに、あなたがかあいがッてばかりおやンなさいますから、
ほんとに逆さまになッてしまッて、わたくしは始終しかり通しで、悪まれ役はわたくし一人ですわ」
「まあそう短兵急(タンペイキュウ)に攻めンでもええじゃないか。どうかお手柔らかに――
先生はまずそこにおかけください。はははは」。
アメリカ人のアンナ・ジャービスが亡くなったお母さんを偲んで、お墓に白いカーネーションを飾ったことが始まりとなって、5月の第2日曜日が『母の日』となりました。
日本では、地久(チキュウ)節(皇后誕生日)を母の日としていましたが、昭和24年頃からアメリカの例にならって現在に至っています。