疲れきってしまうこと、を表している言葉です。【困憊】は、「苦しみ疲れる」の意味で、【疲労】と重ねて、疲れている様子の甚だしいことを表わします。
【疲】は、疒+皮 から作られた形声文字です。
意味は「つかれる」です。
【労】は、勞が正字体です。「力」は農具の鋤(すき)を表します、他の部分は篝火(かがりび)を
表しまして、農耕の始めと終わりに農具を祓(はら)い清める儀礼を表す会意文字です。
【勞(労)】は神が「ねぎらう、たすける、いたわる」というのがもとの意味ですが、
いまは「つとめる、つかれる、ねぎらう、いたわる」となっています。
【疲労】の熟語は「つかれる」の意味です。
【困】は、囗の形の枠の中に木をはめて、閉じ込める形を表した象形文字です。
意味は「こまる、くるしむ」です。
【憊】は、備(音符号)+心から作られた形声文字です。
意味は「つかれる、くるしむ」です。
【困憊】は、「苦しみ疲れる」の意味です。
友人のセリヌンティウスに人質になって貰い、3日間で妹の結婚式を終えて戻って来る約束をします。
『走れメロス』の始めの部分です。
メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌(あく)る日の午前、
陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。メロスの十六の妹も、きょうは
兄の代りに羊群の番をしていた。よろめいて歩いて来る兄の、【疲労困憊(ヒロウコンパイ)】の姿を
見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。
「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。「市に用事を残して来た。またすぐ市に
行かなければならぬ。あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
妹は頬をあからめた。
「うれしいか。綺麗(キレイ)な衣裳も買って来た。さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。
結婚式は、あすだと。」
太宰治 『走れメロス』 の初出は1940年(昭和15年)5月発行の雑誌『新潮』です。