【夙(つと)に興(お)き夜(よわ)に寝(い)ぬ】と訓読みされまして、朝早く起き、夜はおそく寝て、毎日仕事に励むことを表す四字熟語です。
【夙】は、会意文字です。早朝の月を拝む形を文字化したものです。音はシュク、
意味は、朝早く、以前から、などがあります。「つと・に」の読みがあります。
【興】は、同+臼+廾 から作られた会意文字です。「同」は酒器です。「臼」「廾」は四本の手です。
酒器である「同」を上下より持つ形です。儀礼のとき、地に酒を注いで、
地靈を慰撫することを表す字です。そこから転じて「興る」という意味も表すようになりました。
【夜】は、夕+亦からできた会意文字です。「亦」は、わきの下の意味です。
月が、脇の下よりも低く落ちた、夜の意味を表します。
【寝】は、宀+爿+侵(旁の部分) からできた形声文字です。 侵(旁の部分) が音符号でシンです。
「宀」は家屋の象形です。 「爿」はベッドの象形です。
【夙興夜寝】の四字熟語は、朝早くから夜遅くまで、仕事に励むことを表しているのですが、その裏には実は夫に対する怨み辛みが込められていたのです。
『詩経』衛風(エイフウ)氓(ボウ:よそからやってきた者)と題する、4言×60句の長い詩の43句目が
【夙興夜寝】です。
よそ者男がやってきて、美しい娘を口説きます。
二人は、目出度く結ばれますが
三日(みっか)、三月(みつき)、三年(さんねん)の、
辛抱待ち切れず、夫は、浮気の虫に導かれ、妻を悲しませます。
33)我(われ)爾(なんじ)に徂(ゆ)きしより わたしが、あなたに嫁いでより
34)三歳食貧し 三年、食べるものは約やか
35) 省略
36) 省略
37)女や爽(たが)はず あなたに仕えてきましたが
38)士は其の行を貳つにす 男の心は裏表
39)士や極りなし 男の心は分かりません
40)其の德を二三にす その行いをは二転三転し
41)三歳婦と為りて 三年間あなたの妻となって
42)室を勞とするなし 家事を嫌がることもなく
43)夙(つと)に興き夜に寝ね 朝早く、夜遅く
44)朝有るなし 一日たりと、怠らず
45)言既に遂げて なのにあなたは約束忘れ
46)暴に至る わたしを粗末に何故するの。