時の巡り合わせがうまくゆかず、非常に苦労することを表す四字熟語です。
【天歩】は、太陽、月、星などの天の歩みを言います。そこから国家の歩、国家の運命をいいます。
【艱】は、菫+艮(音符号)から作られた形声文字です。意味は、くるしむ。
【難】は、菫+隹 から作られた会意文字です。意味は、くるしむ。
【艱難:カンナン】は、同義の二字を合わせて、「くるしみ、困難」を強調した熟語です。
『詩経』小雅の白華(ハクカ)という4言×32句の詩の7句目に【天歩艱難】がでています。
1)白華菅兮 白華を菅にし
カヤをひたして菅にし、
2)白茅束兮 白茅を束ぬ
白茅を束ねましょう。
3)之子之遠 之の子 之(ここ)に遠ざかれば
あなたが去ってしまったら
4)俾我獨兮 我をして獨(ひと)りならしむ
私はただの独りぼっち。
5)英英白雲 英英たる白雲
むくむくとした雲が
6)露彼菅茅 彼の菅茅(カンボウ)を露(うる)ほす
あの菅と白茅を潤す
7)天歩艱難 天艱難を歩(おこな)ひ
天は艱難を与え
8)之子不猶 之の子猶(よ)からず
愛しいあなたは私を置き去りにする。
この詩は、春秋時代 周の幽王の申(シン)皇后に譬えられた詩です。
幽王が申皇后を斥け、傾城の美女褒姒(ホウジ)を寵愛して国政を疎かにしたため
【天歩艱難】となってしまった話です。