自主性を欠き、勢力の強大な者につき従って自分の存立を維持するやりかた。『広辞苑・第六版』より。
【事大】と言う言葉は、『孟子』梁惠王章句下に記載されています。チョット長い文章ですが、
【大事】な内容ですので。
齊の宣王(センオウ)問いて曰く、
斉の宣王がたずねられました。
鄰國に交わるに道(みち)有りや。
隣国と交際するのに、なにかよい方法があるだろうか。
孟子對(こた)えて曰く、有り。
孟子は、あります、と答えました。
惟(ただ)仁者のみ能(よ)く大を以て小に事(つか)うるを為す。
これはただ仁者だけが出来ることなんですが、
たとえ、こちらが大国であっても、隣の小国を侮らずに礼を厚くして交際することです。
是(こ)の故に湯(トウ)は葛(カツ)に事(つか)え、
だから、むかし(殷の)湯王は(無道な)葛伯(カツハク)につかえ、
文王は混夷(コンイ)に事えたり。
(周の)文王が(西の野蛮な)混夷(コンイ)につかえたの(が、そのよい例)です。
惟(ただ)知者のみ能く小を以て大に事うるを為す。
それからこれは、ただ知者だけが出来ることなんですが、
こちらが小国ならば、(いかに圧迫されても、)大国につかえ(て安全をはか)ることです。
故に大王は獯鬻(クンイク)に事(つか)え、
だから、むかし、周の大王は(北の夷:えびす)獯鬻につかえ
勾踐は呉に事えたり。
越王勾踐は(南の野蛮な)呉につかえたの(が、そのよい例)です。
大を以って小に事うる者は、天を樂しむ者なり。
大国でありながら、よく小国と交際する君主は、『天を楽しむ』者です。
小を以って大に事うる者は、天を畏(おそ)るる者なり。
小国でありながら、大国によくつかえることができるのは、『天を畏れる』者です。
天を樂しむ者は天下を保(やす)んじ、
『天を楽しむ』者は、天下を保つことができ、
天を畏るる者は其の國を(やす)んず。
一方、『天を畏れる』者は、国を保ち続けることができます。
【事大主義】は本来「小国のしたたかな外交政策」でしたが、後世になって
「小国は、大国にすりよって自国の保身・安全を考える」という
否定的な見解を帯びるようになったようです。