きわめて重いものと、きわめて軽いものとを対比して述べた言葉です。
司馬遷の友人:任安(ジンアン)が投獄されたとき、任安は司馬遷に対し「古の賢臣は賢者を推薦することが務めである」と司馬遷を責める手紙を送りました。本音は、牢屋から出してくれるよう武帝にとりなしてくれという内容の手紙でした。
これに対する返答が『漢書』司馬遷伝の、所謂「任少卿(ジンショウケイ)に報ずる書」です。
【泰山鴻毛】はこの中に記載されています。
人固有一死、
人 固(もと)より一死有り、
人はもとより一度は必ず死ぬものですが、
或重於泰山、或輕於鴻毛。
或いは泰山より重く、或いは鴻毛より軽し。
その生命は泰山よりも重いこともあり、鴻毛よりも軽いこともあります。
用之所趨異也。
用の趨(おもむ)く所異なればなり。
それはその生命が果たす役割が違うからです。
「任少卿に報ずる書」は司馬遷が李陵(リリョウ)を弁護して宮刑に処せられた時の気持ちを交えながら述べられています。