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コラム・筆は一本也

「収束宣言はいつ」

安倍首相は先ごろ開かれた参院予算委員会で、東京電力福島第一原発の事故をめぐり、「とても収束と言える状況ではない」と述べ、民主党の野田前首相の対応は誤りだったとの考えを示した。民主党の「収束宣言」は、被災地だけでなく多くの国民から認識の甘さが指摘され、政権交代の引き金にもなった。公約違反や詭弁に終始したわけだから、国民からの信頼を失ったのも当然の帰結であった。
 
▼肝心の福島原発の事故処理だが、使用済み燃料の取り出しが具体化したのはとりあえず4号機のみ。米スリーマイル島の事故の際は、溶融燃料が圧力容器にとどまっており、それでも除去作業は10年以上の年月を要した。しかし、福島原発は圧力容器を抜けて格納容器に達した。廃炉には40年近くかかるというのが専門家の大方の見方である。廃炉~収束宣言となるのは2050年代という気の遠くなるような工程だ。
 
▼自民党政権は廃炉に向けた作業と並行し、復興事業に巨額の予算を振り分けているが、除染の遅れや医療機関、商店街の形成といった生活基盤の整備などを踏まえれば、故郷への帰還までにはおよそ10年はかかるだろう。とりわけ雇用の場を含めたインフラ整備が絶対条件であり、それがなければ若者らの帰郷はまずないだろう。
 
▼被災地の帰還や除染、汚染土壌の中間貯蔵施設をめぐり、国や福島県の対応を終始批判して先月、職を辞した双葉町の井戸川前町長だが、3月10日投開票で行われる同町長選への出馬を決意したという。「原発事故で負けるということは、今のまま、何もしないことである」と町民にメッセージを残して退いた井戸川氏だが、自らの負けを認めたくない意思が働いたのだろうか。やはり故郷の原状が回復された時、初めて収束宣言がなされると思う。【天下無双】
                 (2013・2・21)
 

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