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コラム・筆は一本也

「復興の前提は除染から」

国の復興庁、東京電力の復興本社を筆頭に、「復興」の2文字が席巻する東日本大震災以降のニッポン。確かに、力がわき出るような勢いのある言葉でもあるが、何に付けても復興、復興と、復興の使い過ぎではなかろうか。ひねくれ者にとってはいささか、うんざり気味だ。被災地・福島県にとって何よりも速やかな除染完了が復興の大前提である。忘れることなく、政府と東電は肝に銘じてほしい。

▼復興庁が先日、福島県田村市都路町、双葉町、飯舘村の住民意向調査結果(速報版)を発表した。それによると、福島第一原発が立地する双葉町の場合、「自宅の補修やインフラ復旧が終われば戻りたい」と答えた住民はわずか1割。「帰還の条件は町全域が年間1㍉シーベルト以下だ」と訴え、議会から不信任決議され、辞職を表明した井戸川町長だが、「30年は帰れない」という持論が現実として如実に示している。

▼双葉、大熊、浪江、飯舘の各町村、南相馬市小高区などは除染作業が遅れ、このままだと自宅や公共施設の補修もおぼつかなくなる。帰還したとしても、故郷で農業などを再開できるめどもなく、むしろ「戻りたくない」というのが住民の本音であり、それが現実だ。真の復興とは、以前と同じように人が住み、明るい文化的な生活に戻れること。そして地域経済が成り立つことだろう。

▼国や東電はとかく「復興」の2文字を発する前に、除染に対するしっかりとした決意を持つべきである。そういえば、福島第一原発1号機の現地調査で東電が国会事故調に虚偽説明をしていた事実が明らかになった。現地入りを妨げていたわけだが、まさか国も除染の進捗を妨げているわけではないだろう。原発事故以降、どうも勘ぐってしまう習性が身についてしまった。【天下泰平】
                                                                     (2013・2・7)

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