東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の除染をめぐり、国直轄で進められている重点地区と一般地区における対応の差が福島県民の怒りを増幅させている。除染と事故の収束は復興への最大要件であり、国の姿勢が大きくかかわる。「福島の復興なくして、日本の復興なし」と威勢のいい掛け声だけで終わってしまった民主党の野田政権だったが、自民党の安倍政権にはそれすらない。しかし、中身の実施はこれから。何事もスピーディーな取り組みだけに注視したい。

▼除染は県内市町村でも同時並行で進められているが、作業を終えるには4、5年は要する。遅々として進まない除染を待ちきれずに、個人で除染に踏み切る世帯や小規模事業所が相次いでいる。そこで問題となるのが除染費用の負担先だ。石原環境相が「国ではなく、東電が負担すべき」と言うのは、当然の話。有史以来の過酷事故を起こした東電の罪は重く、それ（除染）を税金で賄うなどと言うのはまったく持って論外。

▼個人除染の費用負担については、東電は自主的な除染を賠償方針として明らかにしておらず、これに反発が広がっている。本来、汚染状況重点地域に指定されている40市町村の除染は各自治体の実施計画に基づいて行われるが、あまりにも除染がはかどらず、線量の高い地域の住民や乳幼児を抱えた家庭では独自の除染を行っている。

▼除染費用の負担にとどまらず損害賠償も発生するだけに、東電自体も即決できない事情があるようだが、「ああ言えば、こう言う」企業体質。「心から被災地の立場で復興を」と公言するなら、国直轄による平均的な除染費用を支払うのは当たり前。東電は加害者であることを忘れず、そうした立場で問題解決を急ぐ必要がある。

▼福島第一原発の事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑など告訴・告発を受けて捜査を進めている検察当局は、東電の勝俣前会長や清水前社長ら幹部を任意で事情聴取した模様だ。25日の新聞報道にあった。事故の予見可能性を焦点に、年度内にも刑事立件の可否について結論が出されるという。【天下無双】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・1・25）