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コラム・筆は一本也

「悲しいかな住民の分断」

地元福島2区選出の復興大臣の誕生で県内のスピーディーな除染が期待されているが、意に反して政府の姿勢は被災地の住民感情を無視した姿勢が目立つ。その例が、ごり押しのように早期の帰還を促していることだ。特定避難勧奨地点によって同じ地区でも道路を挟んで指定を受けられなくなるなど、住民同士の対立も表面化、区域再編が新たな課題に浮上してきた。

▼特定避難勧奨地点とは、警戒区域、計画的避難区域外で年間被曝(ひばく)線量が20㍉シーベルトを超える恐れがあり、政府が避難を促すために指定した地点のこと。引き金になったのが昨年暮れの川内村と伊達市における解除だ。積算放射線量が年間20㍉シーベルト以下になったことが理由だが、伊達市の場合は同じ地区で非指定地区と指定地区に分断され、指定による不公平感から地域にひずみが生じている。震災・原発事故から間もなく3年目、危ぐされていた「住民の分断」が現実に起こり始めた。

▼解除により、東電の賠償は打ち切られる可能性がある。まさかと思うが、政府が原発事故を起こした東京電力の債務超過や倒産を恐れ、早期帰還による復興や事故の早期終息を図っているのではないか、と憶測してしまう。被災者の目線と言う安倍首相の発言はどうも信用ができない。そう思うのは私ひとりだけだろうか。

▼原状回復の最低条件である徹底した除染とインフラの早期回復がなされない限り、故郷に帰っても、そこは“陸の孤島”である。隣県の宮城では放射能汚染が少ないこともあって、津波の被災地の集団移転に伴うプロジェクトが日々進む。それに比べて、福島県の復興はあまりにも遅すぎる。テレビで80歳を過ぎた老女が「苦難を背負って坂道を…」と語っていたのが何とも切ない。リポーターは「何故、80歳を過ぎてまでも坂道を上らなければならないのか…」と結んでいた。【天下無双】
                       (2013・1・24)
 

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