放射能汚染で福島県民の怒りが収まらない中、県都・福島市の瀬戸孝則市長の発言が波紋を広げている。去る15日、大阪市の橋下徹市長を農産物PRのため表敬訪問した際、「久しぶりに放射能から頭が離れましてすっきりしているところでございます」などと発言。「まるで“のう天気”市長だ。不謹慎極まりない」などと批判されている。市役所には電話やメールで約20件の苦情が寄せられたという。

▼この発言、市民感情として理解できなくもない。魔が差したのかはともかく、首長として公の場での発言としては実に軽々しい。まさか、橋下市長の毒気にあてられたわけではあるまいし。今、放射能汚染問題で悩み、苦しんでいるのはいったい誰なのか、当然分かるはずだ。「逃げた市長」などと誹謗中傷を受けた瀬戸市長なら、無責任な発言が自らにどう跳ね返ってくるかわかりそうなものだが…。

▼市長といえども生身の人間。福島原発の爆発事故以来、市民のトップに立って陣頭指揮し、さまざまな対応に追われたつらい立場もある。また、市長も被災者のひとりでもある。1年10カ月、賠償問題や住環境の整備、農産物、田畑の除染、セシウム検査体制の構築などに眠れぬ日もあったという。いっときだけ放射能の3文字から解放されたとしても不思議ではない。ただ、軽はずみな発言はくれぐれも控えるべきだ。

▼積もり積もったストレスや過労で倒れ、行政の執行に空白ができては市民も困る。21日に真意を説明するというが、不適切な発言を反省し、これまで通りに放射能汚染と闘いながら市政運営にまい進してほしい。付け加えるならば、県内首長はもっと結束を固め、「理不尽な対抗勢力」と闘うべきと思うが。【天下無双】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・1・20）