会津観光の起爆剤として期待されている大河ドラマ「八重の桜」が、6日スタートした。初回の平均世帯視聴率が関東地区21.4％、関西地区19.2％。初回が20％を超えたのは2年前の「江～姫たちの戦国～」（関東21.7％、関西20.9％）以来。地元福島地区（福島、郡山市と周辺）は30・７％だった（ビデオリサーチ調べ）。まずまずのスタートに、誘客を当て込んでいる観光業界も胸をなでおろしているに違いない。
 
▼大河ドラマ52作目にあたる同作は、幕末から昭和にかけて波乱に満ちた人生を歩んだ会津出身の新島（旧姓山本）八重（1845～1932）の一代記。会津藩の「ならぬことはならぬ」の教えを胸に、スペンサー銃を手に会津戦争（戊辰戦争）を戦い抜き、のちに同志社大学の創設者・新島襄と結婚。日清、日露戦争では篤志看護婦として活躍し、後年、赤十字活動に尽力した。
 
▼八重の真骨頂を挙げれば切りがないが、なかでも7連発のスペンサー銃を手に戦いに挑み、敵兵を次々撃ち倒したことは有名。この時、城に攻め込んだのが土佐兵で、30数人の戦死者を出している。「八重1人にやられたといって過言ではなかった」（作家星亮一さん）と言うから、まさに女傑だ。「幕末のジャンヌ・ダルク」「ハンサムウーマン」などと称される八重は、会津藩砲術師範の山本家に生まれている。
 
▼物語の前半は八重の男勝りの戦いが中心となりそうだが、敵対するのが安倍首相の地元でもある長州（山口）や、薩摩（鹿児島）、土佐（高知）などを主力とした新政府軍。会津藩主松平容保（かたもり）は徳川家から京都守護職を押し付けられ、警備を受け持った新撰組などによる勤皇志士の殺りくが会津戦争の引き金となった。白虎隊、武家屋敷における婦女子の集団自決、二本松少年隊の討死などの悲劇を生み、幕を閉じた。
 
▼会津若松市をはじめ県内の観光地では一大キャンペーンを展開、「神頼み」ならぬ「八重頼み」で観光の復権を目指すが、放射線量の低い会津地方でさえ観光客が激減しており、旅行会社への安全PRが誘客増のカギを握る。民間の調査によると、高湯温泉（福島市）は行ってみたい温泉で全国3位にランクされ、秘湯の部でも全国2位に選ばれている。放射能にめげずに自助努力で復活している例として観光地も見習うべきだろう。「客が減っている」とアピールするほど風評が客足を遠ざけるという側面もある。安全を前面に自信と誇りを持ち、福島見直しキャンペーンを広域で進めるべきだ。【天下無双】
                                                                     （2013・1・7）