東京電力福島第一原発事故による放射能汚染問題で、福島県は新年度からコメ以外の農産物についても放射性セシウムを調べる全量検査に着手するという。県産農産物の消費者離れが加速しているため、あらためて安全性を確認、県外市場での名誉回復を図るのが目的だ。2年連続で加工を見合わせている県産あんぽ柿を手始めに、対象品目を順次拡大していくとしているが、それにしても県の対応は後手に回っているきらいがある。

▼農協（JA）系の産直所や大手・中小スーパーでは、店頭陳列の前に独自の基準を設定して自主検査を徹底、国の規制値（キロ当たり100ベクレル）を超えるものはすべてシャットアウトしている。家庭菜園などの自家用農産物についても、各市町村が学習センターなどで検査体制を確立しているケースが多く、安心して食べられるシステムをとっている。にもかかわらず、市場では残念ながら本県産農産物が敬遠されてしまう。

▼問題はその風評被害にある。本県産農産物が数値をクリアし、県外市場の青果店頭に並べられても、「福島産」表示が目に留まっただけで消費者からソッポを向けられる。まして福島県内の大手スーパーや産直所にも県外産の農産物があふれているという現実もある。県内の消費者も当然のように県外産に食指を伸ばしている。ついこの間まではこうした検査体制が確立されていなかったため、「福島産のものを県外者が食べるようにし、（空間線量などにさらされている）福島県内の人は控えた方がいい」などと言う、無責任な発言が流布されたことも起因していると思う。

▼出荷用農産物の全量検査では、検査機器の不足や精度の向上など多くの課題がある。そのためには、原因責任からして、東電の強力な資金援助と国策民営で原発を拡大してきた国の財政措置が不可欠だ。このような時こそ、「食の安心・安全」に官民が徹底して取り組み、消費者の信頼を得ることが先決だ。そして、徹底的な除染による原状回復しか復活の道はない。【天下無双】
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