きょう4日は、官公庁や多くの民間企業などが新たな年のスタートを切る仕事始め。経済再生、東日本大震災からの早期復興を掲げる自民党政権に対し、経済界や被災地からは期待が一身に集まる。ところで祝儀相場とは言え、株価が上昇し日経平均は1万円台に回復。1万700円回復は1年10カ月ぶりで、東日本大震災前の水準に戻った。そんなことから、早くも「2007年2月高値の１万8300円へ向けたスタートラインに立った」との強気論も。消費者の財布のひもも緩み、百貨店の初売りは福袋を求めてどこもかしこも盛況だった。リフレ（インフレ）派の金融政策「アベノミクス」の今後の効果やいかに。
 
▼冷や水を浴びせるつもりはないが、さて、順風はどこまで続くのか。国政選挙では民主、自民（反民主）と交互に強風が吹き荒れたが、それよりも気になる2つの「風」がある。風評被害と風化だ。見えにくい風はさらに強まる様相で、とりわけ原発事故の被災地にとっては2つの「痛風」に悩まされる厳しい1年の覚悟が求められそうだ。
 
▼経済界が一身に期待を寄せる再生策だが、極度の円安・ドル高は輸出産業にとってはメリットもあるが、円安は相対的に国力、経済力の低下を招くなどマイナスイメージがつきまとう。日本離れを加速する一面要素もあり、見極めが肝要だ。中国と並び依存度の高い米国の「財政の崖」はひとまず回避されそうだが、米政府が急激な財政緊縮策に踏み切れば一気に円高が進み、円安誘導も水泡に帰す可能性がある。「米国がクシャミをすれば、日本は肺炎に…」の例えは、今も通用する格言だ。
 
▼原発事故の風評、風化の問題だが、最近は福島県を除いた新聞、テレビなどで取り上げられる機会はめっきり少なくなり、先の衆院選では4番目のテーマだったという。福島県の沿岸部・浜通りは除染が進まず、風評だけが広まっている。こうしたことを背景に、募金活動の額も1昨年に比べ、約20億円減。金額の多寡ではないが、ともかく被災地の復興、被災住民の生活基盤、福利厚生のための「現実のお金」が行きわたっていないことだけは確かだ。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・1・4）