世界の先進国で日本だけが人口減少社会をひた走っているという。厚生労働省は31日、2012年の人口動態統計の年間推計を発表した。死亡数から出生数を引いた自然減は21万2千人で、減少幅は過去最大になると見込んでいる。日本は60年に人口が8千万人台となり、生産年齢人口（15～64歳）、年少人口（０～14歳）とも大きく落ち込む。人口減少社会の象徴ともされる福島県は、40年には県人口が現在より最大約38％、122万5千人に減少するとの試算結果がある。
 
▼こうなると今の経済、社会保障システムでは立ち行かなくなり、産業構造を根底から大きく変えざるを得ない。四半世紀以上前から、日本は成熟社会に向けた知識集約型産業や、自然エネルギーなどに特化した産業創出が急がれるとされてきた。震災、原発事故以降はその必要性がより叫ばれるようになった。しかし、どうだろう。過去の遺物である原発は、再稼働どころか、新増設にまで及んでいる。日本社会はいまだ、企業利益優先の独占型の産業構造が支配する。さらに事故収束の手がかりさえつかめぬ状況で、「原発ムラ」に後戻りしていることに何ら疑問を持たない。
 
▼重要課題は福島の再生であり、日本の再興に直結することを、為政者はまず肝に銘じてほしい。復興の前提となる課題は、原発事故の収束、汚染された県土の除染だけではない。行政の権限を地元自治体に委譲し、新産業特区、医療特区、教育特区へと花開かせることも大切。数多（あまた）の特区がこれから必要なのは何よりも福島県だ。
 
▼世界がよりグローバル化する中で、世界に通用する人材を福島から育て、成長企業がどんどん活躍できるような取り組みが急がれる。新しい年は何としても、人と環境が主役になれる社会構造に転換するためのワンステップとしたい。【笑止千万】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2013・1・1）