2011年３月の東日本大震災以降、震災関連の企業倒産は1005件（12月7日現在）に達した。加えて、事業停止や法的手続き準備中の実質破綻が37件あり、震災関連の経営破綻（倒産、実質破綻）は累計1042件。震災関連倒産はいったん収束の気配を見せていたが、再び増勢。業績回復が進まず息切れする中小企業が多いことから、震災関連による倒産は今後も月間40件前後の推移が見込まれると、東京商工リサーチでは分析している。1005件の倒産を都道府県別でみると、最多は東京の288件、次いで北海道68件、宮城52件、福岡46件、神奈川41件、千葉と大阪が各36件、福島35件と続く。

▼先の衆院選の自民党大勝から安倍政権誕生までのこの間、市場は円安、株高で推移。大企業や輸出関連企業はひと息といったところだが、中小、零細企業は倒産件数が示す通り、相変わらずの青息吐息だ。丁寧な説明もなしに安倍総裁が首相就任前に物価目標を発言したこともあり、ガソリン、灯油や正月用品など諸々の物価が上がっているという。厳しい経営を続ける小規模事業所や庶民にとっては、消費増税と併せてとても受け入れがたい。経済格差はますます広がる一方だ。

▼政権発足後、首相ら関係閣僚が相次いで福島県を訪れ、早期復興や東京電力福島第一原発の廃炉作業のスピードアップを約束した。しかし、具体策については触れていない。一方で茂木経産相、石原環境相は原発ゼロに言及。見直しや不可能といった発言を弄し、まったく「事故（自己）反省」が見られない。発足間もないこの内閣の一連の行動は、福島県民は片方のほおを撫でられ、もう片方は平手で張られた気分だ。

▼早期復興も言葉だけならいくらでも言える。岩手、宮城両県の沿岸部に比べ、福島県の沿岸部は放射能汚染が行く手を阻み、復興は大幅に遅れている。そうした中で、避難者と避難先住民とのもめ事も起きている。原発が立地する双葉郡などから約3万人が避難する、いわき市では市庁舎玄関口に「被災者帰れ」のいたずら書きがあったことが明るみとなるなど、避難者と避難先住民とのあつれきが日増しに強まっている。双方がともにストレスを抱える。何が、誰が原因なのか、考えてみてください。

▼今年も大みそかを残すのみとなった。福島原発の爆発事故で故郷を追われた被災者にとっては、長い1年であっただろうし、異郷の地で2度目の新年を迎えることになる。復興庁の調べによると、震災、原発事故などに伴う全国の避難者は約32万1000人（12月6日現在）。口先だけの復興を唱える、われ関せずの政治家や官僚はまだまだ多い。東北、福島の出来事が忘れ去られぬよう、そして被災地のありのままを小紙としても発信していきたいと思う。【天下泰平】（2012・12・31）