衆院選の大勝で政権奪還を果たすことになる自民、公明両党の自公政権は26日、第2次安倍内閣としてスタートを切る。政権を中途で投げ出した安倍総裁だが、政策面では独善的な条項を掲げている点が目立つ。そのため国民の風当たりは強く、至難の船出が予想される。これらを裏付けるように、朝日新聞の世論調査では、政権交代が「よかった」と思う人は57％、自公両党が3分の2を超える325議席を得たことに「よくない」は半数近くの43％に上っている。
 
▼民主党に政権交代した3年前、鳩山首相への期待度は高く、71％あった。今衆院選で自民は議席の過半数237議席を得たにもかかわらず、安倍人気は低空飛行。期待度が51％強に対し、「期待しない」は44％（共同通信）と、早くも短命内閣を指摘する声も。片や「高所から一気にダウンするよりは、むしろ長続きするかもしれない」との“政界スズメ氏”の談も。
 
▼経済界に配慮する姿勢はあらわで、わが国の存続を左右する「原発ゼロ」に関しては「ノー」のスタンス。こうした原発政策に関しては、原発再稼働に厳しい姿勢をとる公明党の求めに応じ、「原発依存度を徐々に下げる」ことで一致した。ともかく、原発被災地の苦悩など眼中になく、ひたすらデフレ脱却を目指す行動が早くも顕著だ。今のところ、弱きものの側に立てる宰相ではなさそうだ。
 
▼消費者物価2％の上昇目標（インフレターゲット）を打ち出し、独立性を保つ日本銀行への金融緩和を強めていた矢先、白川日銀総裁からの電話内容を明かしてしまうなど、不安の種も尽きない。日銀が金融政策決定会合で追加緩和を決定したことについて、「（われわれが要請してきたことが）一つ一つ実現している」と評価。その際、「今朝、日銀総裁から電話をもらった。決定会合での結果を受けて報告をもらった」（ロイター通信）と発言。この発言で市場は混乱。外国為替市場は円相場が上昇、債券先物が買い優勢になった。強行一辺倒で、圧力も辞さない一連の“アベノミクス”には危うさが付きまとう。
 
▼危うさは経済政策にとどまらない。憲法9条改正や自衛隊の国防軍化など、民意を無視した公約が先行しており、来年夏の参院選は波乱含みの局面が予想される。安倍さんには、東京電力の福島原発事故が、これからの日本が生き延びることができるのか、滅びるかの瀬戸際であることをよく認識していただきたい。あの「悪夢の日」をごらんなさい。“アベノミクス”も、建屋ごと一気に吹き飛びますよ。衆寡敵せず、まずは「自戒」あれ。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・12・21）