「政権オセロ」「ジェットコースターのような浮き沈み」…、表現のしやすさといい、分析といい、話題性に事欠かない選挙だった。そして、「脱原発」、「反原発」にせよ、「原発再稼働」も含めて原発問題は空理空論で終わってしまったような空虚感が漂う。これからわたしたち国民は、政権党だけでなく各党の動きをきちんと見定め、場合によっては示威行動も辞さないと覚悟を決めなくてはならないのではないか。特に“おとなしい福島県民”はである。
 
▼今回の衆院総選挙で、自民党は連立を組む公明党と合わせて325議席を確保、絶対的安定での船出となる。近い将来の安倍政権だが、気になることがある。憲法9条改正や日中間の懸案、尖閣諸島の領土権争いについては、今後、大きな波乱含みの展開が予想される。まして「国防軍」の創設ともなれば、国論は少なくとも二分される。原発問題の収束、避難者のことなど、どこ吹く風…となってしまうのか。
                                                      
▼政権党となる自民党の不安材料のひとつに得票率がある。全480議席中、294議席を得た自民は、小選挙区300議席の79％（237議席）を得たが、得票率は43％。大敗した前回の得票数、得票率をも下回る。今選挙は民主が大敗し、第3極が迷走・乱立、そこに逆風となるだろう浮動票が大きく落ち込んだ結果故の「漁夫の利」であり、二重三重の「棚ボタ」大勝なのである。気になる“死に票”は約43％に達し、皮肉にも12党による争いが自民の勝利を後押しした。
 
▼改憲や領土問題は今後、国会での論戦が高まるにつれ、予想以上に早く、波乱含みの政局となる可能性がある。台風、低気圧で生じる高い波頭は、広大に砕け散る。そのことを考えると、安倍政権は爆弾を抱えての航海を強いられそうだ。少数野党の責任もこれまでになく重い。新政権はクリスマス翌日の26日にも発足する見通しだが、圧勝を背景に独善的な政権運営や旧来の体質を垣間見せれば、国民の批判は一気に高まる。白から黒へと。投票率が戦後最低の59・32％。今度は、国民が国を見放せば、あとは国家没落を招くだけ。【天下無双】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・12・17）