衆院選の最中、間隙を縫うように中国、北朝鮮からの挑発行為が目立っている。日中間の争いを象徴する沖縄県尖閣諸島（中国名・釣魚島）の領土問題だが、日本はこれまでの海洋巡視船の監視から、今度は航空機によるパトロールを始めた。日本からの繰り返しの警告に対し、中国当局は「わが国固有の領土」と、逆に警告仕返しする有様。抜き差しならぬ関係は一触即発の事態をはらむ。
 
▼一方で、北朝鮮は事実上の長距離弾道ミサイルの打ち上げを強行。日本を含め周辺各国の緊張の度合いも増している。今回のミサイル打ち上げをどのような制裁で臨むのか。国連での制裁決議も注目される。北朝鮮としては、G2（世界の覇を唱える米中）状況下での生き残り策、駆け引きでもあり、それに対して日本は米韓に中国、ロシアを加えた外交の立ち位置があらためて問われる。
 
▼外交と言えば、まさしく日本は弱腰外交である。かつては全方位外交という言葉がもてはやされたが、ともかくも弱腰外交は民主党政権から始まったわけではなく、自民党政権時代から続いてきたことでもある。それだけに与野党2大政党が外交政策で責任をなすり合う様は、他国から見てどう見られているかをよく考えるといい。GDP世界3位、IMF出資2位の日本が外国から軽くあしらわれるのは、何とも悔しい。勿論、経済力だけで国の等級を決めるものではけっしてないが。
 
▼領土問題は、世界の歴史をみても、多くが紛争、戦争へと進んできた。ともかくも中国、北朝鮮にせよ、指導部の交代を機にわが国への圧力度合いが高まるのは必定。そうした事態を読むかのように、今選挙で自民党は憲法改正、自衛隊の「国防軍化」を政策に組み入れているが、仮に軍隊となると徴兵制度もあり得る。けっして絵空事ではない最近の右傾化である。
 
▼あと3年余で戦後70年を迎える。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減退、産業の衰退など“沈みゆく日本”をさらに襲った大震災、そして東日本一帯を覆い尽くした原発事故の放射能問題…。そして、あす16日は衆院選の投開票日。政権奪取が確実な自民党にとって、国策として進めてきた原発問題、改憲、専守防衛、被災地の復興等々、「第2の戦後」にあって難題は山積。相も変らぬ政治が続くのか、それとも新しい日本に踏み切れる政治に変われるのか、間もなく見えてくる。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・12・15）