16日投開票の衆院選は12党が名乗りを上げるなど、選挙の選択肢が広がっている感があるが、実際のところは実現不能だったマニフェストの反省からか、抽象的で分かりにくい公約が目立つ。具体性に乏しいキャッチコピーだらけだが、原発に関しては1党を除きほぼ具体的ではある…。
 
▼3年前の衆院選は、福島県の場合、全有権者の5分の1にあたる約25万人が投票している。今回は、震災や原発事故の関係で県民約16万人が県内外に避難している状況を考えると、平均投票率は60％乗せがやっとではないか。選挙に関する費用は約600億円が見込まれているから、仮に60％台の投票率では予算の無駄遣いは明らか。
 
▼ところで、原発問題が焦点となっている衆院選。そうした中、事もあろうに環境省の外局にあたる原子力委員会の事務局にあたる原子力規制庁が、原発の新たな安全基準を待たず、既存原発が新基準に適合するかどうかの事前調査に入る方向で検討している、という一部報道があった。
 
▼原子力委員会のトップである委員長は福島県出身の田中俊一氏。原子炉工学が専門の工学者だが、この時期、何故かくも再稼働に向けた事実上の前倒しを検討し始めたのか、見当がつかない。自らの故郷の惨状を顧みることもなく、原発依存社会をこのまま推し進めてもよいものか。故郷の悲しみは続いているのですよ。
 
▼再稼働へ向けた事実上の前倒し?。選挙のどさくさに紛れてではないだろうが、この件は大きな問題を提起した。相変わらずの「原発国家」である。54基の原発敷地内や周辺では地震を引き起こす活断層などの地層が次々見つかっているにもかかわらず、である。7日は宮城県三陸沖でM7.3の地震があり、津波警報・注意報が東北、関東の4県に出され、日本を震撼させたばかり。世界3位の原発を持つ日本。選挙においてもいい加減な「安全」を刷り込まれたままで、再稼働、新設を受け入れることになってしまってよいのでしょうか。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・12・9）