5日のウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）日本版が、4日公示された衆院選の民主党・野田首相、自民党・安倍総裁の原発被災地・福島県での第一声を伝えていた。その選挙予想だが、最大野党・自民が世論調査の支持率でリードしているものの、混戦模様で、連立政権になる公算が大きいと報じている。
 
▼さて、東京電力福島第1原発の爆発事故の後始末に追われる福島県には、2大政党の民主、自民に加え、日本未来、社民の4党首が顔を見せ、脱原発や早期復興を訴えた。持ち時間をオーバーして踏み込むでもなく、公約ならぬ“口約”という口約束に終始していたのではないか。福島、いわき両市であった街頭演説には、被災者も多く訪れていたが、期待外れに終わったようだ。
 
▼民主・野田首相は「福島の再生なくして日本の再生はない。2030年代の（原発）ゼロを目指す」と、定番となった第1声。片や自民・安倍総裁は「安全神話の中での原子力政策は私にも自民党にも責任があり、責任を取ることを約束したい」と。発言内容に男として二言はないだろうなと、いぶかってしまいたくなる。まるで両人とも福島版用の原稿で済ませたような…。
 
▼日本未来の党の嘉田代表、社民党の福島代表も具体性には乏しかった。「脱原発」「卒原発」に伴う代替エネルギーを自然エネルギーと明示するだけで、企業向けや家計を圧迫する料金値上げへの波及には触れずじまい。25～30％の企業向け料金の値上げは、相次ぐ倒産、雇用切り捨てといった「原発不況」を伴う恐れがあるだけに、最優先で取り組むべき課題だ。なのに、党のPRばかりが目についた。
 
▼まだ公示から3日目。「どの党が政権を握っても、急に変わるわけはない」という、あきらめに似た有権者の反応も。再びWSJ日本版を紹介すると、早稲田大学の谷藤悦史教授（政治学）が今選挙を「勝者のない選挙」と予想している。「大半の専門家や議員たちと同じように、谷藤教授は政治的な不安定状態が少なくとも来年夏の参院選まで続くとみている。同教授は政党の明確なアイデンティティ、政策の方向性、傑出した指導者候補がいずれも欠落しているため、今回の選挙は日本の有権者に対する侮辱だと述べている」と。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・12・6）