既成政党に加え、第3極となる新党が多党乱立する中、震災後初の国政選挙・衆院選の公示が1週間後に迫った。「ドタバタ解散」を地で行くように、各党の公約は日替わりメニューそのもの。公約構想をめぐっては党内外から異論が噴出し、相も変らぬ執行部批判でかまびすしい。
 
▼選挙の3大争点とも言える消費増税、脱原発、TPP（環太平洋経済連携協定）のどれひとつを取っても、それぞれ消費者、経済、農業団体の突き上げで実際のところは方向が定まらず、執行部は右往左往するありさま。何とか支持離れを食い止めようと、新年度予算案に選挙区への“お土産”を盛り込むが、肝心の政策論争は棚上げ。非難合戦ばかりが目につき、こんな調子では「決められない政治」が当分続くのではないか。
 
▼各争点の中で最も説得力に乏しいのが脱原発。昨日は滋賀県の嘉田由紀子知事が「脱原発」を旗印にした新党結成を表明し、新たな流れを模索したようだ。しかし、「原発ゼロ」を掲げる政党は多いものの、具体的な代替エネルギーとなるとどうだろうか。民間がどんどんグリーンエネルギー社会へと舵を切る中、具体的な推進策やスケジュールさえ明示されず、何ともお寒い限りだ。
 
▼こうした中、原発が立地する自治体で組織する全国市町村協議会が、早期の原発再稼働を政府や国に要望したという。耳を疑うとはこのことで、信じられない話だ。……まぁ、関西電力大飯原発3、4号機（福井県おおい町）が、史上最悪の原発事故なんのそのと、早々と再稼働しているわけだから、今さらなのかもしれない。
 
▼福島県が1977（昭和52）年に核燃料税を導入して以来、県内には1300億円近くの原発マネーが流れ込んだ。立地自治体を主に公共施設が次々と建ち、確かに生活も潤った。それと引き換えに立地周辺の町村民らは「棄民」となり、子、孫の未来はたちどころに打ち砕かれた。
 
▼再稼働、黙認派の皆さん。あなたたちをあえて非難し、蔑む。今晩の飯と商売繁盛が何よりも優先順位なわけだから、子や孫のことは当然、二の次。「一億総ざんげ」の、あの「国難」の叫びは一体何だったのだろうか。口先だけのまさに“空念仏”だったわけだ。【天下泰平】
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・11・27）