アセアン、オセアニア諸国など12カ国からなる被災地滞在プログラムの訪日団メンバー28人が10月22日から４日間、福島県天栄村を訪れ、原発事故による風評被害の状況を視察した。
　25日は、東日本大震災の海外報道と、自分たちが被災地で確かめた状況がどう違っていたか－をテーマにしたプレゼンテーションが同村山村開発センターであった。母国などでどう報道され、風評があったかをグループごとに発表した。
東南アジアのグループからは「偏見と思い込みは危険。一度思い込むと払しょくするのは容易ではない。まず自分の目で確かめられた」「（豊かな国である）日本も援助が必要。どんな小さなことでも支えになることが分かった」と感想が述べられた。
　オーストラリアの代表は「原発事故直後、日本政府や東京電力に関するネガティブな報道があり、5カ月後ごろにはある家族を追った特集記事が組まれた。1年後も悲観的な報道が続き、1年4カ月後には原発事故は人災事故と断じ、原発利用を辛口で批判的に報道がなされた」と報告。ブルネイでは「原発で批判的な報道が目立ち、内容は刻々と悪くなっていった」。日本から原発を輸入しようとしているベトナムでは「復興の様子が伝えられているとともに、放射能の影響が花や動物に影響している深刻な事態が報道されている」。原発受け入れの是非は「メディアで賛否が分かれ、国民の反応も半々だ」とした。原発を持つインドネシア、タイ、フィリンピンなど、国情によって温度差があるという意見も出された。
　インドネシアの代表は「特派員が日本にいた母国人にインタビューし、震災の状況を詳しく報道」、フィリピンからは「チェルノブイリを超えるかもしれないといったヘッドラインの記事が目立った」と報告。
訪日団のメンバーはジャーナリストも含まれており、「（メディアの多くが）日本に特派員を派遣したケースはなく、ロイターやAFPなど外国の通信社に頼った」と報告した。
　日本のメディアに関しては「専門的用語の羅列ばかりで、水は飲めるのか、食物は汚染されているのか、行っても安全なのか、といった大事な報道がなく、逆に混乱させてしまった」「ポジティブな報道姿勢が見られた」「誤報が多かった」「発表に透明性が足りなかった」「情報不足から風評被害になった」「ソーシャルメディアを含め定期的に情報を発信、更新していく必要がある」などと、報道姿勢を問う直す内容が目立った。
　官公庁からのプレスリリースに関しても「分かりやすく、かみ砕いて発表する工夫が必要」と注文をつけた。ホットラインを開設したある国では、報道内容に理解できず、数日間に2万件の問い合わせ電話が殺到したという。
被災地の風評被害を払しょくするには「小さな地域から県、国、世界へとつながるよう、身近なところから段階的にキャンペーンを広めていく必要がある」と結論付けた。
　訪日団のメンバーは、天栄村で農作物の手入れやリンゴの収穫作業、警察官からの体験談の聞き取りなども行った。11月にも同じメンバーが被災地を訪れる。
　今回のプログラムは、東日本大震災復興支援のため、今夏からアメリカの高校生たちが天栄村などを訪れるなどして現地の人たちとの交流を深めている。
　外務省の委託事業で、日本国際協力センターが実施する「キズナ強化プロジェクト」の一環。宮城、岩手、福島、茨城の４県を訪れ、復興状況などを視察している。
　本県は天栄村ふるさと子ども夢学校推進協議会が実施主体となり受け入れている。