昨年3月12日。大地震、大津波から一夜を明け、予想もしなかった福島原発事故が起きた。その東京電力の原発がある本県は、今さら言うまでもないが、地震、津波、原発事故に加えて、心無い風評飛語の4重苦にあえいでいる

▼これらの問題をニュースとして伝え、検証するのは報道機関の使命であり、責務でもある。かつて「第四の権力」と言われたマスコミだが、マスコミュニケーション（大衆伝達）がゆえの功罪は数多（あまた）ある。風評も大衆伝達なるがゆえの産物だろう。差別発言、教育旅行や観光ツアーのキャンセル、本県産の農畜産物の排除、人口の流出などを挙げれば限りない

▼こうした状況の中で、やはり真価を発揮するのはオピニオンリーダーの代表格、新聞だろう。その新聞週間は10月15日から20日まで。日本新聞協会によると、新聞界のメーンイベントは毎年秋に行われる新聞週間の関連行事だそうだ。都道府県持ち回りのように期間中は新聞大会が開かれ、新聞協会賞の授賞や大会決議が採択される。今年は原発報道をめぐり、全国紙、地方紙がそれぞれ受賞している

▼もともと新聞週間は、1930年代にアメリカ各地で行われるようになり、40年代には全米に拡大。日本では新聞普及と教育のため、戦後日本を占領していたGHQが提唱したとされる。今年で65回目だから、伝統行事でもある

▼新聞をはじめジャーナリズムの大きな役割と言えば、「権力の監視」である。権力を監視するがゆえの第四の権力でもあるが、内憂外患の日本でいったいどれだけ機能しているのだろうか、などと考えたりする。新聞週間の発祥の地からは「日本のメディアは監視するに足り得ていない。とりわけ大手メディアはダブルスタンダード」と厳しい指摘が投げかけられる。ソーシャルメディアの今日、危急存亡の時である。【天下泰平】

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・10・19）