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コラム・筆は一本也

「ノーモア・フクシマ」

東北人の心に深く刻まれた日「3・11」。この地上において何ともしがたい思いは、けっして拭い去ることはできない。だが、人の思いというものは千差万別…、移りゆくもの。あれからまだ2年も経たぬ今、人々の脳裏からは急速に消え去ろうとしている。そんな世相に鉄槌を打つかのような話が隣の宮城県から飛び込んできた

▼3月11日を県条例により「みやぎ鎮魂の日」と定め、犠牲者の精霊を永久(とわ)に弔おうというもの。来春にも具体化し、2年後の2014(平成26)年には実施に移される見通しだ。すでに、沿岸部自治体の学校を休みにするなどの案が検討されているという。震災、津波で宮城県内は9528人が亡くなり、今も約1400人が行方不明となっている(10月11日現在)。被災3県では最も多い犠牲者を出している。そうした思いもあり、今回の条例案となったのかもしれない

▼もちろん、岩手、福島両県も言いようのない悲しみを抱えている。宮城の取り組みに触発されてというわけではないが、本県においても「ノーモア・フクシマ」の切実な声を風化させない取り組みが必要ではないか。例えば、県独自の挙動日や週間を制定する案はどうだろうか。何はともあれ、遅きに失した感のある県行政だが、これらを風化させないためにも、ここは検討課題と考える。風評被害にまで遭っている福島ならなおさらのこと

▼1954(昭和29)3月、マーシャル群島のビキニ環礁付近で操業中のマグロ漁船が米軍の水爆実験に巻き込まれて被ばく、乗組員の無線長が亡くなった事件があった。「第五福竜丸」事件である。これを機にわが国では、広島、長崎、そして福竜丸と続いた悲劇を繰り返すまいと、原水爆禁止運動が始まり、原水禁世界大会へと発展していった

▼そして、福島の原発事故はまさに第4の悲劇。2度と起こしてはならなかった原子力災害を、国策という名のもとで再び繰り返してしまった。国民の命より、経済を優先させるような政策や考えを改めてもらいたい。「ノーモア・フクシマ」。その先頭に立つのがわれわれ福島人だ。【天下無双】
                              (2012・10・14)

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