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復興への思い

「民俗芸能の再興、ここ1、2年がカギ」 民俗芸能学会福島調査団長・懸田弘訓

懸田弘訓(かけた・ひろのり)民俗芸能学会福島調査団長

【略歴】昭和12年、伊達市霊山町生まれ。福島大学芸学部卒。県立高校、県教育庁文化課勤務後、県立博物館 学芸課長、県立川口高校校長などを歴任。現在、県文化財保護審議会委員、会津大、郡山女子大学短期大学部非常勤講師、民俗芸能学会評議員、 民俗芸能学会福島調査団長 

平成23年3月11日の東日本大震災は、東日本の太平洋沿岸の各地に未曽有の被害をもたらした。約1200年前の貞観年間にも同規模の地震と津波があったといわれているが、それから数えると1200年に1度の大震災ということになる。
 今回の震災では、当然地震の被害はあったが、津波の被害が特に大きかった。さらに福島県では福島第一原子力発電所の事故による影響も計り知れない。同原発が所在する双葉町と大熊町だけでなく、当初は南相馬市小高区、浪江町(津島地区を除く)、富岡町、楢葉町、田村市の一部、川内村の一部がそれぞれ警戒区域に、南相馬市原町区、田村市の一部、広野町は緊急時避難準備区域に、飯舘村、葛尾村、浪江町津島地区は計画的避難区域とされた。今年になって区分が改められたところもあるが、南相馬市と田村市を除く町村は、役場も中通り地方、あるは会津地方、双葉町にいたっては埼玉県の加須市に移転した。住民の避難は予告なしで、移動するバスに乗るまで1時間もないところが多く、ほとんどが普段着で財布と毛布一枚を持った程度であった。それに避難先に落ち着くまでに少なくとも数カ所、多い人では10カ所以上も移動した。県外に移住した住民も多い。当然、祭りや芸能に関する諸道具は持ち出す時間も余裕もなかった。これらは地震による直接の被害は少なかったが、沿岸部では津波によってほとんどが流されている。社殿も流失、あるいは倒壊して被害は大きい。用具類が残っている地区でも保管していた建物の戸や窓が壊れ、ここから放射性物質が進入して汚染され、使用できないほどの高い数値を示すところもあった。保存会の代表者は、その責任から運び出して管理しなければと思っているが、仮設や借り上げの住宅では生活するにも狭く、ここでの保管は不可能である。1年以上もそのままにして置くだけに、温度や湿度、ネズミの被害も心配している。多くの被災者は今なお立ち直れずにおり、避難による人口の減少、放射能汚染、そして風評被害と幾重もの被害に苦慮している。

  しかし、それでも祭りや芸能の継承をあきらめた集落はなく、いずれの団体も再興への熱意は強い。しかし、原発が立地する双葉町や大熊町とその周辺の町は、今なお立ち入りができない。保護団体の代表者は再興するにはここ1、2年が重要で、それ以降になると可能性はかなり下がるのではないかと案じている。
浜通りの地方の被害の実態と、再興の取り組みを紹介したい。
 新地町の「十二神楽」は、近年まで7つの集落で継承していた。幸い県指定重要無形民俗文化財の「福田の十二神楽」の被害は少なかったが、(らち)(はま)、木崎、釣師、今泉の集落は被害が大きく、この地の神楽は中断に追い込まれた。一部では再興の機運はみられるが、まだ具体化していない。これらの神楽は宮城県から伝えられた法印(ほういん)神楽系のもので、県内では新地町だけに伝わる貴重なものである。
 相馬市の沿岸部も甚大な被害を受けた。ことに原釜、尾浜、磯部の被害が大きかった。これらの集落は津波によりほぼ全戸が流失し、わずかに残った家も住める状態ではなくなった。相馬市の調査によると、原釜は住民1225人中99名、尾浜は2310名中61名、磯部はもっとも悲惨で1218名中、2割にあたる243名が亡くなった。 
相馬市内には約20カ所に神楽が伝えられているが、原釜、松川(尾浜)、新田、岩子、磯部の5集落の獅子頭や諸道具は流失、あるいは大きな被害を受けた。しかし、原釜の津神社は高台にあって被害は軽微であったために、氏子はすべて仮設住宅などに避難しているものの今年の4月14、15日には神輿渡御を再興し、神社とお旅所で芸能を披露した。松川もこの日が祭りで、神楽が集落を巡った。
 磯部の稲荷寄木(よりき)神社も高台にあって社殿の被害は少なかったために、ここでも4月15日に仮設住宅から多くの参拝者が訪れて春祭りを行い、被災後初めて神楽を披露した。獅子舞のあとに悪魔払いとしてめいめい獅子で頭を噛んでもらい、満足して笑顔もこぼれていた。さらに8月下旬には明治天皇百年祭に招かれ、明治神宮の社前と特設舞台で舞った。
南相馬市は鹿島区、原町区、小高区ともに、多彩な芸能が継承されている。ことに海岸沿いに特色あるものが多いが、これらの集落は多くが壊滅した。
 鹿島区烏崎には、この地方の典型的の田植踊に加えて、民謡につれて踊る「子ども手踊」が3組あった。ともに10曲以上伝えていたが、集落は姿をとどめないほどに流失した。また、この烏崎浜は、県指定重要無形民俗文化財の「()(たり)日吉神社の浜下(はまお)り」のほか1社の潮垢離の祭場でもある。来年はせめて手踊りと盆踊りを、避難先で復活したいという。
原町区でも新田川流域から南にかけて津波の被害が大きく、神楽と田植踊を伝えるいくつもの集落が壊滅した。北萱浜には神楽と県内では珍しい北陸からの移民が伝えたと思われる「天狗舞」があったが、ここでも用具はすべて流失した。南萱浜でも犠牲者が出た。さらに社殿と神輿も流失し、浜下りの神事は中断している。
 小高区では神楽5団体と田植踊1団体が大きな被害を受けた。しかし、川原田の神楽は再興に取り組んでいる。村上は海岸に接した集落で、ここには県内でもっとも芸能化した田植踊が伝えられている。この集落は家屋の9割が流失し、社殿も倒壊した。その上、保存会39名のうち会長、副会長を含む12名が亡くなった。それでも今年10月27、28日に郡山市で開催される「ふるさとの祭り2012」に出演することになった。
  また、旧相馬中村藩を挙げて行なわれる国指定重要無形民俗文化財の「相馬野馬追」は、原発事故の影響が大きかった。それでも被災して4カ月後の7月下旬に、略式ながら実施した。ことに重要な「野馬懸(のまかけ)」を行う相馬小高神社は警戒区域で立ち入ることができず、境界からわずか90㍍離れた原町区字高の多珂神社で実施し、予想の3倍を超える騎馬武者が集まった。これは旧相馬中村藩の子孫という誇りと野馬追にかける熱意の表れとみている。
 浪江町では請戸地区が壊滅した。482戸が流失し、行方不明も含めて221名が亡くなった。ここには神楽と小学生による田植踊があり、(くさ)()神社の安波(あんば)(さい)に演じていた。神社は礎石を残すだけで境内の大木もすべてなくなり、宮司と子息の禰宜(ねぎ)の両夫妻も犠牲になった。それにもにもかかわらず、田植踊は被災4カ月後の7月初めから役場が移転した二本松市で練習を始め、8月21日にいわき市の「ふくしま海洋科学館アクアマリンふくしま」で公開した。引き続いて郡山市、本宮市、二本松市で開催された民俗芸能の催しにも出演を要請された。被災1周年を迎える2月19日には、供養として浪江町の住民が避難している福島市の4カ所、二本松市の1カ所の仮設住宅を巡って披露した。8月下旬には磯部の神楽とともに明治天皇百年祭に招かれ、明治神宮の社前と特設舞台で披露した。神楽もまもなく再興される予定である。
室原の田植踊は、田植踊の伝播を探るうえで貴重なものである。集落の全員が県外にまで避難しているが、10月の「ふるさとの祭り2012」に出演を予定している。
 津島には4つの集落に田植踊があり、県指定の重要無形民俗文化財に指定されている。ここでも住民はすべて避難している。それでも国の補助で用具や衣装を整え、早い機会の再興を目指している。
双葉町では北部の海沿いの集落の被害が大きく、両竹の神楽と、浜野の神楽・田植踊の諸道具や衣装は流失した。民家は旧家の古風な住居か多いためか、全壊が目立った。
 大熊町は、熊川の集落の6割強が流失した。ここには県内では旧相馬中村藩だけに伝えられている典型的な4人による一人立ちの獅子舞、「熊川の鹿(しし)(まい)」が伝えられていて、鹿頭ほか諸道具を失った。 当町も警戒区域で立ち入ることはできないが、来年の再興をめざしている。
 富岡町では仏浜と毛萱の河川流域の被害が大きい。ここは諏訪神社と四十八社山神社の浜下り神事の祭事地でもある。ここも警戒区域で、地元での再興は難しい。しかし、上手岡の「麓山の火祭り」は昨年夏、避難している安達郡大玉村で小規模ながら実施した。
 広野町では下浅見川流域から北部が流失し、鹿島神社の浜下りはできなくなった。しかし、町民は戻りつつあるので、早い再興が望まれる。
 いわき市では久之浜、薄磯、豊間がほぼ壊滅した。いわき市菅波の大國(おおくに)(たま)神社は海岸から約10㌔離れた内陸部にあるために、地震による被害は若干あったが、津波の影響はなかった。しかし、同社の県指定重要無形民俗文化財「菅波大國魂神社のお(しお)()り神事」のお潮採りの祭場となる豊間地区は、約600戸の大半が流失して85名が亡くなり、神事にかかわる海友会員も数名犠牲になった。それでも昨年、震災2カ月後の5月3、4日には略式で行い、今年はほぼ例年通りに実施した。豊間の諏訪神社の獅子舞の諸道具も被災したが、財団の援助で、今年の7月末の祭りに再興した。
 それにつけても、これほどの被害を受けながら、各地で再興できたのはなぜであろうか。これまで祭りや芸能は五穀豊穣や無病息災など信仰的な目的で行われると言われてきた。確かにそれは当然で、ことに漁師の方々は毎日が危険な海上での仕事だけに信仰深い。しかし、今回の大震災を振りかえって再興の動きを見ると、それだけではないように思われる。ある中年の女性は「家も財産もすべて失った上に、祭りや芸能までなくなったら、何が残るの」と真剣に訴えていた。被災した方々にとって、祭りや芸能は最後の精神的な支えである。一人では生きていけない。「ふるさと」で互いの協力し、助け合ってきたからこそ、これまで生きてこられた。その互助の心は、祭りや芸能を演じる中で育まれた。これらを失うことは「ふるさと」、つまり「生きる場」を失うことになる。このために長年祭りを受け継いできたともいえよう。祖先の智恵がここに凝縮されているといっても過言ではない。
 これから再興するにあたっても、流失した諸道具の修理や新調は文化庁や県の補助が見込まれる。最大の課題は、いつ地元に戻ることができるかということである。祭りや芸能は郷里と一体である。ことに祭りを他地区で再興することは困難で、芸能といえども他地区での継続は難しい。規制区域が見直されても、かなり長期間戻ることができない町村がでることは確実で、戻ることができても完全な除染は難しく、子どもを持つ親はためらいがある。避難している方々の中には、すでに避難先に住民登録を済ませたり、住居を買い求めて永住を決めた方もわずかではあるがいる。祭りや民俗芸能の再興には、なにより帰還が必須である。
 

【写真:津波で壊滅した浪江町請戸地区。苕(神社は礎石を残すだけで境内の大木もすべてなくなった㊧。避難住宅地)で田植踊を踊る小学生たち。以前は苕()神社の安波()()演じられていた()()()()

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