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「東電の会議映像 全面開示を」  事故後に混乱、迷走する本店と現場

東京電力が2011年3月11日の福島第1原発事故直後から記録した社内テレビ会議の映像で、東京地裁が映像の加工されていない原本のコピーを保管する手続きを取ったことが8月29日、報じられた。同原発事故当時の経営陣らを訴えている株主代表訴訟の原告側と東電側が、映像の原本コピーの保管で合意したという内容。
 一方、東電は加工された映像を8月6日から報道機関に一部開示している。一部映像は3月11~15日に記録された延べ約150時間分。音声、画像処理が計1684カ所あり、音声が途中で「ピー」音に変わったり、人の映像がぼやけたりするなど、不鮮明な点はかなり多い。
 映像の閲覧・視聴は9月7日まで報道機関に限ったものだが、録画・録音が制限されるなど批判も多く、事故検証に向けての全面公開を求める声も高まっている。こうした映像の公開は、福島県において同県民を対象に行うべきだとの意見も出ている
 8月7日、閲覧のため東電本店を取材した。
                 ◇
 映像は、官邸に詰めていた本店の武黒一郎フェローのぼやきともつかぬ話から始まる。一方、現場の吉田昌郎福島第1原発所長からの苦情も伝わる。
 
 武黒フェロー「だいたい、まぁ。首相補佐官とか、その副長官みたいな人が事前の仕切りをするんですね。ご承知のように大変民主党政権は若い人たちがそういう役になっていますから、非常に優秀な人たちだとは思いますけれども、やっぱりその…、で視界はもちろんそれなりに広さはあるんだけれども…」
  …………
 吉田所長「今、避難している人たちの中からものすごく不満があって、東電が説明しに来ないというかですね。いつまでこんな生活が続くんだと。不満に多々出るようで…。今後のことを考えると多分ものすごい我々今回のことで鼻つまみものになっちゃうわけですけども。このタイミングで手を打っておかないと、ますますという感じがして…」
 
 電源喪失に陥り、バッテリーの手配に動く現場や本店。
 
 本店「バッテリーあるの」
 吉田所長「ないんです。それが今、手配してんですけど」
 本店「バッテリーだけど、広野のJヴィレッジにないんだっけ」
 1F(福島第1原発)関係者「あるかもしんないけど、“かもかも”の世界ですね。んで、容量も違うと思うし」
 本店「あるものを使ってくってことですね」
 吉田所長「○○さん。モニター結果を定期的に報告してくれる」
  …………
 このあと、吉田所長が本店から電話で繰り返し呼び出しされる。
 
 本店「○○さん、ほんと緊急です。緊急割り込み、○○君。吉田所長聞こえますか」
 本店「吉田さん、吉田所長」
  …………
 本店「○○さん、首相官邸から電話かかってるんで、電話転送しますんで」
 
 電話調整に追われる。
  …………
 炉内を冷やす作業へ。勝俣恒久会長らの会話が加わる。
 
 本店「氷、ドライアイス、何でもぶち込んじゃおう」「製氷会社の調達…手配、1㌧か2㌧か、わからない…」
 勝俣会長「氷の調達、自衛隊要請する必要があるのか…」「製氷工場からJヴィレッジに運ぶ方法…」
 
 空中からの放水を検討。小森明生常務(元福島第1原発所長)らと吉田所長のやり取り。
 
 吉田所長「1号機の燃料プール、今、あの、むき出しています」
 小森常務「ちょっと消防で水を突っ込むっていうのが、ひとつあれか」
 吉田所長「だけど、場所に近寄れないんで…」
 小森常務「近寄れないなぁ」
 吉田所長「近寄れない。まぁ極端なこと言うと」
 小森常務「ヘリコプター」
 吉田所長「ヘリか何かで、上から水を噴霧するとかね…」
 本店「消防ヘリみたいな…」
 
 ベント(弁を開いて排気)を焦る早瀬佑一顧問(元副社長)が、吉田所長に声を荒げて指示する様子、世界の危機を口にする現場の緊迫した状況。
 
 早瀬顧問「ベントできるんならさぁ おい、吉田」
 吉田所長「はい」
 早瀬顧問「ベントできるんだったら、もうすぐやれ。早く」
 吉田所長「はい」
 早瀬顧問「余計こと考えるな。こっちで全部責任とるから」
  (武藤栄副社長が入る)
 早瀬顧問「とにかく小弁でもいいから早く開け」
 
 このあと、「世界が変わると思うんで…」という会話が飛び込む。日本だけでなく、世界の危機を指している。危機迫る状況も、淡々とした口調が交わされる。
  …………
 本店「1Fの皆さん、考えて欲しいですけど。D/W(ドライウエル)の圧力はね、サブレッションチェンバーの圧力より高いというのはおかしいんですよ。これ、サブレッションチェンバーはD/Wよりも圧力が高くなっているはずですから、そこもよく考えて操作して欲しいんですけど」
 吉田所長「まっいいから、取りあえず操作に集中してくれ」
  …………
 技術者でない清水正孝社長(元資材担当)が加わる。資材の手配を指示するが、周りも含めて迷走する。
 清水社長「装置手当てする…」
  …………
 「ちょっとさぁ、もっと真剣に対応してくれよ。保修も。発電やってる人をね。バックアップでさぁ、ちゃんとさぁ、フォーローすぐしてくれよ」「水位教えてくれる」
  …………
 ブルドーザーの手配を始める。小名浜からJヴィレッジに運んでも誰もいない状況。
  …………
 「ブル運転できる人は…」「2Fから1Fまで持っていって」
 増田尚宏福島第2原発所長「ブル運転できる人いるんですね」
 答えられず、現場は混乱が続く……。
  (肩書は当時)
 
   ※51項目・500㌻を超える資料ファイルと映像からの一部抜粋

  【写真:加工された映像を報道機関に一部開示している東電本店】

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