ボランティア活動を通して２人の女性が協力し合い、実現させた震災復興祈念の演奏会が福島市で開かれ、３００人を超える市民らが感動と歓びの演奏を披露した。
  日本を代表する世界的な女性指揮者西本智実さんが加わり、震災、原発事故で疲弊する被災地・福島を元気づけ、明日への生きる力を持ってもらおうと開催した。題して、「ふくしま・みんなの演奏会～楽器を持って集まろう！」。１９日、同市のあづま総合体育館で開かれた演奏会には、演奏者３３２人のほか、約１０００人の聴衆が詰めかけ、心温まる市民演奏会にエールを送った。
  今回の市民手作りの音楽会を成功させたのは、福島市の主婦名和良江さん（４９）とボランティア仲間の東京・田無市の音楽事務所経営林妙子さん（５５）。２人は東日本大震災を乗り越えて再会し、福島から発信する演奏会の成功に結びつけた。
  演奏会は、民族楽器タブラの音に合わせた演奏者の入場から始まった。特別参加の「西本智実と仲間たち」（イルミナートフィルハーモニーオーケストラ）と福島大管弦楽部有志が合同で「ハンガリー舞曲第５番」を演奏、このあと「双頭の鷲の旗の下に」や、この日のために作曲家青山樹里さんが作曲した「スパークル」などを披露し、客席も含めた全員演奏で盛り上がった。
　「スパークル」のネーミングは、前日の練習の際に曲名を考案したところ、募集で集まった中から西本さんと青山さんが、福島の復興にふさわしい曲名として選んだ。「未来へはじけ、きらめく」という意味が込められているという。 
演奏の合間には手拍子で参加する市民のためのレクチャーもあり、西本さんの親しみやすい人柄がにじみ出るなど、アットホームな演奏会となった。「ボレロ」の演奏で会場は最高潮となり、大勢の市民が音楽を通した一体感を共有した。
  クラリネット演奏で台湾から参加した小学２年生の劉亭沂（リュウテイイー）さんは、父が東日本大震災後に東北のためにできることを模索している中で、今回の演奏会開催をネット上で見つけ、演奏するために来日した。演奏歴２年という劉さんは、大人たちに加わって堂々と演奏していた。
  東京から駆け付けたマレーシアの黄志福さんは「実際に福島に来てみて、印象がかなり違った。また来ようと思います」と感想を述べた。
ボランティアで出演した西本さんは「震災からの復興のためにできることを模索している中での出演依頼だったため、二つ返事で協力させていただいた。福島の人たちに、私も心を寄せていることを知ってほしいし、これからも自分ができることを世界中に呼びかけていきたい。未来へ希望を持って、ともに前へ進んでいきましょう」と語った。
　　　　　　　　　　（2012・８・21）