妖精や、人の姿をした虫や可憐な花々を描いた、スイスの国民的な絵本画家、エルンスト・クライドルフ（１８６３－１９５６）の作品展が４日、郡山市立美術館で開幕した。
　クライドルフが本格的に日本で紹介される、初めての展覧会。
　スイス・ベルンに生まれたクライドルフは、子どものころから自然の中で花や虫をスケッチしては楽しんでいた。
　学費を工面するため石版工として働き、ドイツ・ミュンヘンの美術学校に通って画家を目指したが、過労で体を壊し、６年間アルプスで療養生活を送った。
　療養中にアルプスの山でスケッチをしていたクライドルフは、季節はずれで咲くプリムラ、リンドウ、エーデルワイスを見つけ、珍しさから思わず摘み取ってしまう。後になって後悔したクライドルフは償いのために絵に描きはじめたという。
　これをきっかけに、初めての絵本「花のメルヘン」を1898年に出版。
　クライドルフの絵本には、妖精や擬人化した虫や花が数多く登場。そうした登場人物は、ユーモラスで可愛らしい一方、細部まで非常に写実的に描かれている。
　19世紀末ごろから、ヨーロッパでは多色刷りの絵本が盛んに出版されるようになるが、クライドルフはそのさきがけとなる絵本作家として高く評価されている。
　今展では、アルプスの山でスケッチした花や、絵本の挿絵の原画など合わせて２２５点を展示している。
　

　会期は９月１７日まで。
　開館時間は午前9時30分から午後5時まで（入館は午後4時30分まで）。
　月曜日休館。9月17日は祝日のため開館 。
　観覧料は一般８００円、高校・大学生５００円、６５歳以上か中学生以下、または障がい者手帳を持つ人は無料。
　会期中の関連イベントは次の通り。
　講演会「ヨーロッパの絵本世界（予定）」（９月１６日午後２時、入場無料、講師は翻訳家の野坂悦子さん）▽美術講座　１「クライドルフの絵本をみる・よむ」（８月２６日午後２時、入場無料、講師は同館学芸員）、２「スイスの美しい自然とクライドルフ」（９月２日午後２時、入場無料、講師は同館学芸員）▽ギャラリートーク（８月４日午後２時、９月１日午後２時、企画展チケットが必要、講師は同館学芸員）▽映画会「マルタのやさしい刺繍」（９月９日午後２時、入場無料）
　問い合わせは、郡山市立美術館（電話024-956-2200）へ。