白河市の立教志塾は２６日、芥川賞作家で僧侶の玄侑宗久さんを迎えた定例研修会を同市立図書館で開いた。
　玄侑さんは「３．１１以降の生き方」と題し、日本の美学や日本人が持つ感情の機微に触れて、福島に生きることの大切さを語った。
　「日本人には面影を懐かしむ独特の感情が根差しており、もののあわれとなって至っている」と民族的な成りたちを示した上で、「どんな災難に遭っても一から出直す力強さもある。一からやり直すということは技術の伝承であり、それをつないできた。その例が全国に４７基ある五重塔であり、地震でも崩壊しないという心意気の表れではなかったか」と話した。
　原発事故による放射能被害にも言及し、放射線量のとらえ方、廃棄物の仮置き場問題などを幅広い視点で語った。「世界には福島より放射線量の高い国、地域が多くある。日本で年間被ばく量１㍉シーベルトを超えている県は（福島県を除いて）１０県ある。これは中国からの黄砂が原因だろう」とも述べた。
　そうした点を踏まえ、「何事も完全を突き詰めることが果たしていいことなのか、考えてみる必要がある。むしろ、二段構えの考えがあってもいいのではないか」と危機をあおるマスコミ報道などに疑問を呈した。
　美しいハスの花を引き合いに、「泥の中にしかハスは咲かない」と述べて講話を締めた。
　玄侑さんは三春町在住。同町の福聚寺第３５世住職。東日本大震災復興構想会議委員、福島県立医科大経営審議会委員、福島原発事故で避難する子どもや若者を支援する「たまきはる福島基金」http://www.osyf.or.jp/ 理事長を務めている。
　立教志塾への問い合わせは、電話0248-23-1427。
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