コンピューターシステム開発を手掛けるＥＭＣＯＭホールディングス（東京）は、郡山市の日大工学部との共同研究で、天然鉱石のフィライト（千枚岩）を活用した放射能汚染土壌除去システムを開発、このほど福島市で実証実験を行った。
　放射能汚染土壌除去システムは、放射能に汚染された土壌からセシウムを含む粘土層のみを取り出し、砂れき類は洗浄後に元の土壌に戻すことができる洗浄方式の迅速除染処理システム。掘削土量の減容化も目的としており、高圧水発生装置のエジェクターポンプを使って土壌成分を粒子ごとに細分類できるのが特徴だ。日大工学部生命応用化学科の平山和雄教授らとの共同で開発を進めてきた。
　これまでの除染作業で課題だったコスト削減や作業拡大、スピード化が図られた。実験の結果、「処理速度は１工程３分間以内で、１５立方㍍の汚染土壌を１時間程度で処理する」（平山教授）という。
　フィライトは内部がスクランブル状に入り組む気孔の形状で、セシウムを一度吸着すると排出しにくい構造。他の物質より容積、面積が大きく、吸着率も極めて高い。このため、作物の汚染対策や、有機農業の肥料、プラスチック・ゴムなどを燃えにくくする難燃剤などに用いられなど、汎用性のある鉱石として注目されている。
　日大工学部との連携による実証実験では、分離後の土壌の放射能濃度が約８９～９５％の範囲まで除染された。特殊吸着材フィライトろ過槽循環による粘土質懸濁水の除染効果は、懸濁水放射能濃度が１６５～９８４（ベクレル/㌔）から８６～１５３（ベクレル/㌔）に下がるなど、明らかな数値を示した。凝集沈降剤を使ったろ過水最終処理では、放射能濃度１０（ベクレル/㌔）以下という実証試験データも確認、水や土壌の回復に要件を満たす結果となった。
　一方、福島市での実証実験では、土壌成分中の粒子が簡単に分離され、除染率９０％まで洗浄された砂れき層（約５００ベクレル/㌔）を回収した。この後、粘土質の濁水中のセシウムをフィライトが吸い取り、再利用可能な処理水と廃棄の汚染土壌に分離された。
　同社は「今回のシステムを土壌だけでなく、ヘドロやがれき、枯れ草、ビニールなどにも応用していく」という。金学敏社長は「福島県内のいろいろなところで活用してもらい、一刻も早く肥沃な国土の復活と元の福島に戻っていただきたい」と語った。

　
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　【写真：放射能汚染土壌除去システムの実証実験と、システムの活用を呼びかける金社長】

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（２０１２年６月２２日）