須賀川市小倉でバラ農園「にこにこバラ園」を営む伊丹雅昭さん（52）は、同市の小学校や養護学校に花をプレゼントする活動を行っている。
  きっかけは、昨年の東日本大震災。「少しでも明るい気持ちなってもらおう」と、同市の避難所などにバラを贈ったのが始まりだ。
　同園は約２６５０平方㍍の農地、４棟の温室に３０種、約１万株のバラを育てている。
　インターネットやフリーペーパーを通じて花を直接販売しているが、震災の直後は注文が激減したという。「未曾有の大災害の中、花を買う余裕のある人は少なかったのだろう」と話す伊丹さん。
　そこで、丹精込めて育てたバラが少しでも役に立てばと、避難所や公共の施設にプレゼントして回り、多くの人から喜ばれた。
　その後も、同市の小学校や養護学校に花をプレゼントする活動を続け、子どもたちを対象に簡単なアレンジメント体験なども行った。
　「好きなように飾ってごらんと言うと、はじめは戸惑っていた子どもも次第に生き生きとした表情になり、思い思いに花を生けていた」と話す伊丹さん。
　伊丹さんは、この活動を「花育（はないく）」と呼び、「子どものころから花を身近に置く習慣を持ってほしい」と話す。
　「花の世話はなかなか面倒だと考える人が多いが、茎を切り戻して水を替えるだけ。５分あれば十分。多くの人に、花を眺めて楽しむ、余裕のある毎日を送って欲しい」とも。
　伊丹さんは大阪市出身。大学卒業後は千葉県にある外資系企業で研究員を務めていた。赴任先のデンマークで、質素だがのんびりと自分の時間を楽しむ心豊かな生活に触れ、同じく研究員だった妻の涼子さんと田舎でのんびりと子育てをしたいと思うようになった。
　帰国後は、涼子さんと一緒に全国各地の農業関係の催しを見て回り、長沼町（現須賀川市）で半年間研修した後にバラの水耕栽培を始めた。
　バラ農家を始めて１５年。「農業は生きものが相手。昨日まで元気だったのに、突然病気になってしまうということもある。毎日が戦い」と話し、農業の厳しさを語りながらも笑顔は絶えず、バラ作りへの情熱と一途な思いが伝わる。
　「もっとバラが気軽に買え、生活の中にもっと花を取り入れられるように、いろいろアイディアを絞っている」という伊丹さん。安くて新鮮な花を消費者に届けるため、市場などを通さず直接販売している。「うちの花は日持ちは倍、値段は相場の半額。自信を持ってお勧めできます」と伊丹さん。
　花瓶入りのアレンジ商品やケーキとのセット商品、風呂に浮かべて楽しむ「お風呂用バラ」など、工夫を凝らした品ぞろえも豊富だ。　　
　ネット販売に加え、９月には同市にショップを構え店頭販売するという。
　6月はバラ農家にとって出荷の最盛期。開店の準備も加わり忙しい毎日だが、「デンマークで体験した心の豊かさをいくらかでも感じてもらいたい」と、伊丹さんは花づくり精を出している。
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　ネット販売の問い合わせは、にこにこバラ園（電話0248-72-7834）へ。
   ホームページURL　http://www.nicobara.com

【写真：伊丹雅明さん（左上）甘い香りいっぱいの温室内（右上）お風呂用バラ（左下）人気の品種「レッドスター」（右下）】