東日本大震災で発生したがれきの広域処理が進まず、宮城、岩手両県は通常の処理量の２３～１０年分の膨大ながれき処理に追われているという。こうした問題を背景として、広域処理に賛同するネットのブログに、受け入れに反対する人たちへの意見が述べられていた。「東北からのがれきの受け入れに神経質になる気持ちはわかる」としたうえで、「東北由来のがれきを十把一絡げに嫌がるのはおかしい」との主張だ

▼「そもそも福島原発事故後、アメリカでも福島原発由来の放射性物質が検出したくらいだから、日本列島に住む人が皆もうヒバクシャであることを覚悟すべき。……東北の人だけに我慢を強いて、世界中に迷惑をかけて、自分だけは…。そういう心根で本当に良いのだろうか。『心の復興』が必要なのは被災者ではないかもしれない」と痛烈に批判する

▼先日、関西に住む女性の友人からメールが届いた。「こちらにいると福島で起こっていることがまるで別世界のことのよう。阪神淡路大震災の時の福島もそうだったかもしれませんが、決して福島だけのことではないのだと、大半の人は気づいていないようです」。原発事故の関心が薄れ、風化してしまうのではないかと友人は心を痛め、警鐘を鳴らす。その末尾には、京都の旅館経営者（サーファー）のホームページが紹介されていた

▼ページを繰ると、「守.jp」のマークと代表者メッセージ、そして脱原子力を目指すメッセージに目が移った。「すべてを破壊し、未来を奪い取る物を前に、右も左もありません。価値観の違いも、社会的地位も、財産も関係ありません。福島の現状に学ぶことです」。率直な言葉と信念に思わず共感を覚えた

▼放射性物質を含む恐れのある震災がれきの受け入れをめぐっては、地域エゴとは違う意見、主義主張があるだろう。それでも、「弱者」を助ける気持ちがもっと前面に出ても良いと思う。【笑止千万】

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（2012・5・16）