エネルギーの地域自立と食の安全を目指す「第12回全国菜の花サミットinふくしま」が28、29の2日間の日程で、福島県須賀川市で開幕した。菜の花の植栽は、放射能に汚染された大地の浄化作用があるとされており、サミットではこうした事例報告も踏まえて、農地の原状回復や資源循環型社会への取り組みを探っている。
サミットには全国の約100団体などから約600人の関係者らが参加。同市文化センターで開かれた開会セレモニーでは、須賀川一小合唱部の児童たちが唱歌「故郷」などを歌い上げた。主催者を代表し、佐藤博実行委員長が「地域資源循環型社会、地域自立エネルギー活動の菜の花プロジェクトに食の安全を加え、放射能に負けない福島の姿を全国に発信したい」とあいさつ、開催地の橋本克也市長が歓迎の言葉を述べた。特定非営利活動法人(NPO法人)菜の花プロジェクトネットワーク代表の藤井絢子代表
は「被災地にとどまらず、これからの日本がどうあるべきかを考えるサミットにしたい」と、原発や化石燃料に頼らない社会の実現を呼びかけた。
「ドイツにおけるバイオマスエネルギー村の取り組み」と題した
基調講演では、独ゲッティンゲン大教授のマリアンネ・カーペンシュタイン・マッハンさん、コンサルティング会社社長のゲルド・パッフェンホルツさんが、ドイツのバイオエネルギー村の成功事例を報告した。続いて、東北大環境システム生物学分野教授の中井裕さんが「津波塩害農地復興のための菜の花プロジェクト」、福島県農業総合センター作物園芸部主任研究員の平山孝さんが「菜種に対する放射性物質の影響について」、エコERC社長の爲廣正彦さんが「菜の花の栽培技術について」、ひまわり総務部長の岩崎康夫さんが「須賀川市菜の花プロジェクトの取り組みについて」と題して、それぞれ事例報告した。
対談で、NPO法人チェルノブイリ救援・中部理事の河田昌東さん、須賀
川市でデータに基づく
先駆的農業を展開するジェイラップ社長の伊藤俊彦さんが「福島の放射能と食の安全」をテーマに意見を交わした。
最後に県立岩瀬農業高の生徒たちが「東日本の再生」「大地を放射能や塩害から早期に回復させるための取り組み」「食とエネルギーの地産地消」などをうたったサミット宣言を読み上げた。
会場には、須賀川、いわき市の菜の花プロジェクトや福島大、ジェイラップなどの活動の取り組みを紹介したパネル、資料が展示された。
国内では現在、休耕田に菜の花を植え、搾った菜種を食用油、バイオ燃料に利用する取り組みが菜の花プロジェクトネットワークを中心に進められている。サミットはこうした取り組みを広め
、活動を後押しするため開いており、本県は初の開催。テーマは「よみがえれ ほんとうの空 おきあがれ 明日への大地~『菜の花プロジェクト』と『食の安全』、放射能に負けない福島の姿~」。
2日目は福島空港ビルでの分科会、須賀川、いわき市の菜の花プロジェクト、すかがわプチ周遊各コースへのエクスカーション、閉会セレモニー・分科会報告で幕を閉じる。
≪プログラム・29日≫
エクスカーション<午前8時40分~・いわきコース、9時~須賀川コース>▽分科会「農地の放射性量低減対策と食の安全確保について」「菜の花を使った津波塩害農地復興について」「菜種単収アップに向けた栽培事例・技術について」<午前9時~>▽閉会セレモニー・分科会報告<午後1時~>
□分科会リーダー=伊藤俊彦氏(ジェイラップ社長)中井裕氏(東北大環境システム生物学分野教授)爲廣正彦氏(エコERC社長)
(2012・4・28)
「第12回全国菜の花サミットinふくしま サミット宣言」
私たちは福島が大好きです。福島はステキなところです。
しかし、3月11日に東日本を襲った大地震、津波、そして福島第一原子力発電所事故が私たちからすべてを奪いました。1年が経った今もなお、放射能による直接的な生活環境の汚染と、それに起因する風評被害により、復興に向けた確かな展望が見いだせていません。
私たちは、安全で美しい福島の郷土を、大地を、歴史と文化を未来に残し伝えなければならない責務があります。そして、私たちは福島に生活することに誇りを持ち、これからもたくましく生きていきたいのです。
私たちは、この「3・11」を教訓にし、これまでの「他人から与えられたエネルギーに頼る社会」から「地域が自立的にエネルギーを生み出し、地域を創造していく社会」を目指し、勇気と決意を持って、そのための一歩を踏み出していかなければなりません。また、放射能や津波による塩害から大地を守り、安全な「食」を確保しつづけなければなりません。そして、「食とエネルギー」という社会の持続性を生み出す力を持つ農村と農業の復興を進めなければなりません。
このような思いを胸に、安全な「食」と「エネルギーの地域自立」を全国の皆さんや次の世代に伝えることを目的として、全国菜の花サミットは福島県須賀川市で開催されました。サミットでは、ドイツにおける「地域が自立的にエネルギーを生産し消費する社会のあり方」が紹介され、また「放射能や塩害を乗り越えていく菜の花プロジェクトの取り組み」が報告されました。
菜の花プロジェクトが進める資源循環型社会づくりの取り組みは、東日本大震災を契機に、その意味を一層深くしています。未来の世代が希望の持てる日本の再生をこの福島からはじめるため、応援してくださる全国の皆さんとともに、次のことがらに取り組みます。
1. 未来の世代が勇気と希望が持てるビジョンを持ち、新しい日本を作り出すために、福島をはじめとする東日本の再生に取り組みます。
2. 私たち大地を放射能や塩害から早期に回復させるため、全力を挙げて取り組みます。
3. 農業・農村を持続可能な社会における基盤として再評価し、地域の特徴を活かした食とエネルギーの地産地消の推進に取り組みます。
私たちは国内外の諸活動と連携してこれらの取り組みを拡げていくとともに、地域の自発的・自立的な活動を支える大胆な支援の仕組みづくりを国に要請します。
私たちは、あきらめません。日本の再生をこの福島からはじめましょう。
2012年4月28日
第12回全国菜の花サミットinふくしま参加者一同
■主催:第12回全国菜の花サミットinふくしま実行委員会
■共催:特定非営利活動法人・菜の花プロジェクトネットワーク、財団法人日本グラウンドワーク協会、公益財団法人東京財団、須賀川市
【写真:(左上から右下へ)バイオエネルギー村の取り組みに関する基調講演と、あいさつする佐藤実行委員長、藤井代表、橋本市長、須賀川一小児童の合唱、サミット宣言を読み上げる岩瀬農高の生徒代表、各団体の活動パネル展】